座右の書

       

 昨日、ふと通りかかった本屋の前で、夫が「ここならあるんじゃない?」と言うので、何のことかと思ったら。
 私が欲しがっていた、須賀敦子全集全8巻。単行本だと、1冊が6000円ちかくして、手が出せずにいた。そんな理由もあって、最寄りの図書館の須賀敦子の本の何冊かは、常に私の手元に借りられている状態。貸し出しの延長は1回だけですよ、と言われるので、仕方なく返却しては、また別の須賀敦子を借りて帰る、という始末。私はけっこう自分勝手で迷惑な、図書館利用者なのだった。
 そんなことをいつまでも続けるのは恥ずかしいし、(っていうか、やっぱ、良くないだろ。)ついこの間、ネットで調べたら、文庫本なら、もっとずっと手頃な値段で売られているのを知ったので、(もっと早く調べればよかった。)いい加減、買ってしまおうと思ったのだ。
 駅前の、昔からある本屋さん。店のなかは、わい雑、というのか、整然としてなくて、ごっちゃごっちゃ。今どき、こんな本屋さんもめずらしいと思うが、本来、本屋ってこんな雰囲気であるべきなのではないか、とも。綺麗すぎたり、カッコよすぎたりする今どきの本屋は、なんかウソっぽいっていうか、本の内容まで薄っぺらい気がする。たしか、最初の須賀敦子の本「ミラノ霧の風景」も、私は20年近く前に、この駅前のごちゃごちゃな本屋で買ったはずだ。
 そんなごっちゃごっちゃの店内でも、手に取れば、どこか凛とした気配を放つ彼女の本。本棚に見つけたのは、4〜8巻だけ。誰だ?私より先に、1〜3巻を買ったのは?仕方ない、この間の日曜の夜も、NHKで須賀敦子の特集、やったばっかりではないか。あれを観て、さっそく買いに走った人がいたのかも・・・って考えすぎか。ともかく須賀敦子は、死んでからも人気絶頂なのだ。
 でとりあえず、4〜8巻はお買い上げ。(←大人買い?)いつも趣味のものは自分で買うが、夫が「これは勉強の本だから。」と言って、昨日は買ってくれた。「何の勉強?」と訊くと、「人生の。」だそうだ。