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 一泊したヴィチェンツァの夜は、この土地ならではのお料理を出してくれるトラットリーアへ。決して高級な店ではないのだけれど、そこはやはりヴィチェンツァ、お店にただよう空気も、どこかぴしっとしているし、お店の人のサーヴィスもスマートで、ああ、この街はやっぱりハイクラスなんです。
・・・メニューがさっぱり読めん・・・この店、知らん料理ばっかりか?・・・と思ったら、ぜーんぶヴィチェンツァの方言で書かれてありました。その下のカッコのなかに標準イタリア語が書いてあるので、それを見て料理を察します。
 「ヴィチェンツァは、やっぱりバッカラ(干しダラ)だろ。」「海もないのに?」「海がないからそれが保存食なんだろ。」「普通、海が遠かったら、魚じゃなくて、イノシシとかにいきそうなのに・・・」
ま、そんなアホな会話のあとに、夫のすすめるとおり、名物のBaccala' Vicentina をチョイス。ポレンタが添えてありました。味はねぇ・・・なんか魚肉ソーセージをつぶして、高級な料理に仕立てた感じ。(発想が庶民です。)

     


 食事中、最初はなんかシンフォニーみたいな、いかにもなクラッシックがかかってたの。それがなんかこの店の感じと、パッラーディオの街の様式感満載な雰囲気とで、すっごくベタだな・・・と思いながら食べていて。そしたらとつぜん、お店のおじさんがCDを入れ替えた途端に・・・なにこれ?なにこの音楽!すっごーーーく、シブイ!

 さっそく何のディスクか、訊きましたよ。「Ludovico Einaudi、コンテンポラーネオね。」とおじさんは答えて、軽くほほ笑んで立ち去りました。くーーっ、やられたー!

 旅を終えて、ヴィチェンツァの街を思い出すとき、私のなかにこの音楽が流れます。数百年前のうつくしい街に、ぴったりと現代の音楽がかさなって・・・
 旅ってこういうために、するものだよねぇ。

   


 ヴェネツィアの、なぜか魚市場のなかに見つけたCD屋さんで。お店のおじさんとおばさんが、声をそろえて、「Ludovico Einaudiなら、これがいいわよ。」と教えてくれた、I Giorni。聴いていると、さっきまでざわついていたいろんな考えが、すーっとおだやかになって、心に気持ちのいい風がとおります。