Il Vittoriale  1

     

 イタリアの3大詩人といわれるダンヌンツィオについての私の知識は、非常に浅い。学生時代に履修していた授業で、(自分の意思とは関係なく)採りあげられた歌曲の詩がダンヌンツィオによるもので、それをしつこく音読させられたことはものすごく覚えている。が、イタリア語を今よりももーっとわかっていなかったし、そもそも詩を味わうということ自体が、どういうことかわからなかったので、ほとんど何もわからずに歌って、それっきりだった。教えてくれた教授が、恍惚としながら目を細め、どこかすーっごく遠くを見ながら、「・・・いい詩だ・・・」とつぶやくので、何だかよくわからないが、どうやらダンヌンツィオの詩人としてのポジションは、他の詩人のそれよりも別格らしい、ということだけはわかったが、やっぱりおバカな私にそれ以上はわからず終いだった。
 その後何年も経って私が結婚した人は、ダンヌンツィオという人物について、散々な言葉を何度も口にするのだった。
あいつはな(←失礼ながら、ダンヌンツィオのことです。)、(詩の中で)パストーレ(羊飼い)になりたい、などとウソぶきながら、自分の家に軍艦まで持ってる、言ってることと、やってることがちぐはぐなヤツだ。
 しかしそんな夫は、いつかガルダ湖に行くことがあれば、ガルダ湖畔の街ガルドーネにある、ダンヌンツィオの別荘に一度行ってみたい、とも言った。そしてとうとうそのときがきた。あんたこそ、言ってることとやってることがちぐはぐなのではないか?
 
 滞在していたシルミオーネから、船に乗ってガルドーネに向かう。湖ってさあ・・・なんか活気がなくてさあ、覇気がなくてさあ、だからかお年寄りの人が多くてさあ・・・なんかもっと年とってから行っても、充分に間に合った感、拭えず・・・船のなかでも、間違いなく私が一番若かったね・・・

    

 ともかくたどり着いたガルドーネ。船から降りたすぐのところに、Trenino トレニーノ(おもちゃみたいな電車)が停まっていて、これがそのダンヌンツィオの別荘まで連れて行ってくれるらしいよー。っていうか、この街はそこしか見るところないと思うけどね。トレニーノのおじさんに訊くと、船の到着時間にあわせて、船着場で待っていて、お客さんを乗せて発車、らしいです。お昼から2時くらいまでは、おじさんもお昼休みをとるので、走ってないらしいですが。ともかく行かれる方は、ぜーったいこのトレニーノを利用されたほうが良い。かなりの距離の、途中からはすっごい坂道ですので。(腰痛の大患者、非常に助かりました。ちなみに運賃は、一人2ユーロでした。)

    


 で、ダンヌンツィオの別荘、通称(?)Il Vittoriale にラクラク到着です。