昨日のこと

      

 近年大流行りの市町村合併で、今ではその名前を消滅してしまったある町。そこでは、かつてからフレンドシップ相手国であるイタリアの文化を紹介する活動をやっていたのだが、合併後もひきつづきその活動を行っているので、内容は何でもいいのでイタリアの音楽でコンサートやってください、というめずらしいお話が届いたのはいつだったか。「フレンドシップ」とか、「文化交流」とか、具体的にはどういうことなのかがさっぱりわからないけれど、「何でもいいです。」というところだけ都合よく理解して、夫とコンサートをすることになった。それにしても、知らない人から突然そんな話をたのまれるなんて、私たちのイタリア馬鹿も、それほど知れるところになっているの?

 はあ〜、なのに昨日はぜんぜん歌えなかったなあ。今日も録音聴いてがっくし来たしなあ。どの曲も、私にとっては旧知の仲、というくらい、よく知った曲でありながら、カンツォーネなんていうジャンルはあくまで自分にとっては「聴くもの」であったわけで。よーく知ってるから大丈夫、と思って取り掛かったら、まったく知らない場所に穴を掘るような作業で、骨が折れた。

 開演5分くらい前に、ちょっとした事故が起こって。1曲目はその後遺症をひきずってさっぱりで、だんだんプログラムが進むうちに治っていった感じ。後半は慣れもあってか、少しは落ち着いてたと思うけど。だけど今日録音聴いたら、やっぱり前半はお客さんがゲホゲホ、ゴホゴホしたり、すごく客席がざわついてて、後半になると、しーん、として聴いてくれてるのがわかるんだよね。やっぱり聴く人もちゃんと解っているんだな、と怖かったよ。

 音楽をやるのと、旅をするのと、いったいどちらが自分の地下活動なのか、さっぱりわからなくなっている今の私ですが(明白です!)、これまで自分が歩いてきた道で、出会った景色だったり、経験した場面だったり、耳にした言葉だったり、そういう裏づけのようなものを持ってカンツォーネをやれたことはよかったな、と思いました。でももうカンツォーネはしばらくやらない。

 馴染みのないナポレターノ(ナポリ方言)が頭のなかを泳ぎつづけた数ヶ月でもありました。でももう忘れてもいいんだな。うれしいな。

   


 余裕のなかった昨日、写真なんてぜんぜん撮れなくて、だからいただいたたくさんのお花の写真。ツリーのような置物は、お友達みなさんからいただきました。お世話になっている、フルールクルールのハナイロ先生の作品です。こんなステキなのがあったら、もうツリー出さなくていいかもね。ついでにイタリアのクリスマス飾りのプレゼーピオを隣に出しました。カポディモンテ焼のプレゼーピオ、なんだ、やっぱりまだナポリじゃん・・・