日課

      


 土曜日の朝。朝食のあとのテーブル。

 新聞の折込広告で、せっせと夫が作っているのは・・・↓


      

 私が料理するときに使う、生ゴミ入れ。何でもかんでもシンクの三角コーナーに捨てていたら、全部が水分でべちゃべちゃになるけん。この広告で作ったゴミ箱に入れて、その都度ポイ。その方が気分がええ。・・・というのは言い訳で、貧乏性の私、毎日毎日たまっていく新聞と、それよりも立派な紙を使っている折込広告が気になった。何かに使えないか?と。そしたらネットで、この紙の箱の作り方が載っていたので。で、それを自分が作るわけではなく、何気に夫に折り方を教えてみたら、なぜか俄然やる気になった夫。

 時間があれば毎朝折ってくれるが、夫いわく、とりわけ土曜の朝刊に入ってくる広告がいいらしい。週末にお買いものに出かける家族が多いからか、断然枚数が多いし、何より紙の質のいい広告がたくさん入ると言う。

 私は長いこと気がつかなかったが、夫はどうやらゴミ箱を折り始める前に、まず広告紙の選別を行っているようだ。なかでも件の土曜の朝は、分譲マンションや住宅を取り扱った広告が多く、このテの広告に使われた紙は上質でぶ厚く、水分を含んだ野菜の切れっぱしを入れたりしても、破けたりしにくいであろう、と言うのだが。

 日課と書いたが、朝早く出かける日はこんな悠長なことをやっている時間はなく、夫はそのまま出かけて行くが、そんな日も夜帰ってから、広告を物色している。いつもどおり紙の選別を行ったあと、彼は静かに折りつづける。夫が朝、折ってくれようがくれまいが、使う方の私は毎日遠慮なしにじゃんじゃん使うので、折りためたストックを入れてあるカゴがスカスカしてくると、夫はそれはそれは気が気でなくなるらしい。できればレッスンしている間も、空いている手の方はゴミ箱折りに専念していたい、と言うほど。

 いつだったか夫がソリストで出演したコンサートでは、自分の歌う箇所がすごく少なく、それでも観客を前にステージの上でじーっと椅子に座り、たまに訪れる自分の出番を待っていないといけないのがとても退屈で手持ちぶさたなので、この待っている時間に曲の終わったページから楽譜を破り、それでゴミ箱を折りたいのだが、という申し出があったが、もちろん私が却下した。