BAKU

cucciolo-mayu2009-04-03

    
 先日帰省した折、立ち寄った喫茶店があります。今はカフェ、という言い方をするのかもしれませんが、30年近くまえから、私はこのお店を知っていて、なつかしいお店でもあるので、何となく昔風に喫茶店と呼びたいのですけど。
 前回お邪魔したのは4,5年前のことではないでしょうか。ほんとうにひさしぶりでした。このお店、一見すると、ここは南フランスか、あるいはスペインに来たかのような錯覚を起こすくらい、建物も、お店の中も、そして何よりお庭がとてもセンスよくて大好きなんです。それも、頑張って作りこんだ感じは全然しなくて、お店と庭が自然に調和しあい、そこだけ違った空気につつまれたような雰囲気です。ちょうど、クリスマスローズが庭いっぱいに咲いていて、春のこの季節に訪れることができたのは、とても幸せなことでした。






 頑張った感じはしない、と書いたけれども、ここまでの空間を作り出せる奥様のインテリアや庭のセンスは、タダモノとは思えません。とても気さくな、笑顔の素敵な方で、うちの父が陶芸をやっていることをご存知なので、めったに行かないのに、私のこともちゃんと覚えてくださっていて、感激しました。たくさんお話したことはないので、私のほうは奥様のことをよく知らないのですが、店内にさりげなく置かれてある陶器も、おそらくフランスやスペインなどヨーロッパのもののようだし、仕事の合間に外国へ旅に出かけられることもあるのでしょうか。きっとそこでいろんなものを見たり触れたりすることで、あの世界が作られていくのでは、と勝手に想像していました。
 お店の奥に古いピアノが置いてあります。昔、まだ子供のころに、このピアノの前に、天井の梁からブランコがつるされていて、それに乗るのが好きだったのです。このブランコに乗りたくて、馬区に連れて行ってくれ、と親にせがんでいたのを覚えています。(たしかお店の名前、昔は馬区と漢字で書いてたと思いますが、今はBAKUになっています。)でも今考えると、ブランコに乗りたかったのはたしかにそうだったのだけど、子供ながらに、あのお店のどこにもない素敵な空気は感じ取っていて、本当の理由は、その空間に身を置きたかったからではないかと思うのです。小さいころから、とくべつなお店でした。
    
 今回行って、あらためて夫と、「今までに見た庭で、一番だね。」と話しました。うっとりと窓の外の景色に酔いしれながら、静かにコーヒーをいただきました。
 若い頃は、自分の生まれた田舎がいやでいやで、都会に憧れ、外国に出かけ、目が外へ外へとばかり向いていたのに、大事なものは、ずーっと昔から自分のちかくにあったのではないか、と今、思います。
 そしてBAKUの近くの海。私の大好きな景色です。