清潔好き

      

 うちにピアノを習いに来る子供たちは、とても元気だ。おそらく外で遊んでいてそのままレッスンに来てしまったり、という状況がままあることも知っている。少々の風邪くらいはへっちゃらで、レッスンには必ずやって来る。そんなにもピアノを愛してくれている、ということなのだろうか?うれしいぞ。(?)
 先生としては気になるのが、申し訳ないが、その手がきれいかどうかということである。あまりにも汚れていたら、うちで手を洗っていただく。しかし一番気にかかるのは、風邪をひいている場合。声楽を生業としている我が家で、夫が風邪をひいたりなどしたら、2、3週間は仕事にならない。マジで死活問題なのだ。
ピアノ教室のピアノの鍵盤なんか、実はすんごく汚いのではないか、と私は思っている。ウイルスが鍵盤についたら、次に弾く子たちにどんどん移っていくはずだ。
ピアノは湿気が大敵の楽器なので、鍵盤のほうを消毒したりはできない。せいぜいが乾拭き程度。なので、鍵盤に触る手のほうを、是非ともきれいな状態にして弾きにきてほしい。
 と言っても、相手は子供だからねえ。というわけで、泡で出てくる消毒液を、玄関に置いてみたのだ。この間の新型インフルエンザ騒ぎのときに、薬局に並んでいた商品である。ポンプを押せば、ハンドソープのように泡がでてきて、それを手にすりこむと、すぐに乾いて消毒完了、という便利なもの。「レッスンに来たら、まずこの泡の消毒してからレッスン室にはいるんだよー。」とひとりづつ、来るたびに声をかけたら、どの子もうれしそうに、押しては手をこすって、をやっている。
 可笑しいのはその次の週からだった。彼女たちはこの消毒液がえらく気に入ったらしく、絶対に忘れることなく、すりすりしている。見るからに、それはつけすぎでしょー、という量を出して、腕全体、肩の辺りまで塗りたくる子もいる。「これ、たのしい?」と訊くと、「うん!」と満面の笑みでかえされた。たぶんレッスンに来るのに、一番楽しみになっているのが、この消毒だと思う。
 何がウケるのか、子供についてはいつもわからなくて、驚かされるのだった。