舞台裏


 
午後、発表会の打ち合わせだった。今日でちょうどあと一ヶ月。なかなかのんびりしている私たちなのだった。
 打ち合わせの場所は、なぜかいつもファミレス。前回の発表会を、同じメンバー(先生たち)で半年くらい前にやったばかりなので、結構さくさく決まっていった。
 私たち先生の専攻が、バラバラなのだ。私は声楽のくせして、ピアノなんか教えてしまっているし。そんな先生は私一人だけだけど、あとの先生たちの専攻は、ピアノ、ヴァイオリン、チェロとさまざま。音楽の世界じゃない人からみると、同じ音楽の人同士なんだからそう違いはないでしょう、と思うかもしれないが、いやいや、これが実は大ありだ。わたしゃ、弦楽器のことなど、皆目わからん。楽器の名前くらいはわかる、そんな感じだ。そんな風に、今日話していても、ほかの先生たちには、私のやっていることがよくわからないようだった。このバラバラ度が、私にはとても心地良いのだ。
 ピアノの発表会だからといって、次から次へと、子供のピアノを聴かされてもねえ、と正直、私は思う。その点、いろんな先生たちの集まりだと、普段、あまり聴いたりできない楽器の演奏だって聴けるのが、めずらしいし、おもしろいなあと思って、私も仲間に入れてもらった。でも実のところは、先生たちが適当にバラバラなところが一番気に入っていて、だからこそうまくいくのだと思っている。
 よく、似た者同士は気が合うって言うけど、私は逆じゃないかと思う。少なくとも、私の場合は違う。自分と同じようなタイプの人間なんて、べつに付き合わなくてもいいと思っている。時間も限られている人生の中で、出来たら自分の知らない世界の人や、違う考え方を持った人と付き合うほうが、発見が多いような気がする。
 それはまあいいとして、発表会を一人でやってしまう先生はすごいと思う。もし一人だったら、当日、どんな忙しいことになるのだろう?お母さんたちに、お手伝いをお願いするのだろうか?役割分担もそれぞれ決めて、ああ、やっぱり合同でやらせてもらって良かったなあと、今日、あらためて思う。
 残るは・・・やっぱり演奏だ・・・