華やかな舞台の裏では・・・

 

夫は、必要なことですらしゃべらないような人なので、(今日の午後のレッスンが3時から入っている事だって、お昼過ぎに初めて聞いた。)彼が昔、どんな人生を歩いてきたのかということを、じつのところ私はあまり知らない。(が、今さらあらためて聞く気もない。)
 そんな夫も、旅行中は楽しいせいかいつもよりは饒舌になるようで、今まで聞いたことのなかった話をしてくれる。


 トリノには昔、仕事で半年くらいいたのだそうだ。トリノの、Teatro Regio王立歌劇場(昔、トリノサヴォイア王家が治めていたから、王立なんていう文字がつく。)で、いったい何のオペラを、(半年にも及んだのだから、何本ものオペラをこなしたのだろうか?)どのようなスケジュールで何回歌ったのか、だれと演ったのか、とにかく何も話さないのでわからない。
 その間、アパートでも借りていたのか、と訊くと、安いペンシオーネ(日本だと民宿みたいな。)のようなところにずっと泊まっていたのだそうだ。ただ、滞在費は自費、そして当然のことながら、出演料は公演が終わってから支払われる。
 半年間、宿に泊まり、食べていくだけでもかなりの出費であることは容易に想像できるが、案の定、当時の夫のお財布は、かなりキビシイ状況になってしまったらしい。
 このピンチを切り抜けようと、当時の彼はとてもナイスなアイデアを思いついた。そうだ、劇場に行って、(言って?)ギャラを前借りしてしまおう!!!
上の写真が、ホントのホントに夫が前借りをお願いしに行った、トリノ王立歌劇場。

 オペラ歌手が劇場にギャラを前借りする話など、聞いたことがない。よくもまあ、こんな立派な劇場に・・・。もちろん前借りの件については、あっさりと断られ、その後もさらに厳しく、ひもじい生活がつづいたそうである。


    
 そのトリノ王立歌劇場の、今シーズンの演目は・・・
気分が悪くなりそうなピーター・グライムズとか、どうでもよいタンホイザーなんていうのは聴く気がしないが(←まったく私の個人的趣味)、そのほかはなかなかイタリアオペラの王道をいく演目がずらり。