隠し味に

     
 
  Pesto Genovese は、日本ではジェノヴァ風ペーストとよばれているでしょうか?バジリコ、松の実、ニンニク、ペコリーノかあるいはパルミッジャーノ、オリーヴオイルを混ぜて作ったペーストは、ゆでたパスタにあえるだけで簡単にバジリコのパスタが出来上がるので、とても便利。スーパーで瓶入りで売られていて、ご存知の方も多いと思います。ジェノヴェーゼというこのペーストはジェノヴァが本場。
 ジェノヴァから一時間くらいの海辺の町にも、今回の旅では滞在しました。その町にある食堂で食べたアサリのパスタには、このジェノヴェーゼのペーストが、隠し味に使ってあり、とても美味しかったのでした。
 そのあとにジェノヴァに行ったので、そこではぜひこの本場のジェノヴェーゼのペーストを買って帰ろうと思いました。市場には元気一杯のバジリコがわんさと売られていて、ここがペーストの本場だというのも納得でした。
     

 ジェノヴァのローマ通りにある、Bruciamonti というお店。おそらくここがジェノヴァの町では高級食材店と思われます。どうせ買って帰るなら、美味しいものを、と思い向かいました。私には、「おっ・・・!」と声が出るようなお値段でしたが、頑張りました。「たった今、作ったばかりだよ。」とお店のおじいさんは自信たっぷりに言いました。
 大事に持って帰り、今日のお昼は食堂で食べた味を再現しようと、ヴォンゴレを作りました。いつもより少なめのトマトで作ったトマトソースに、恐る恐るバジリコのペーストを一さじ、もう一さじ、と加えて味見してみると、すごく美味しい!このソースにアサリを投入。いつもの材料に、ペーストを入れただけなのに、足し算ではなくて、掛け算したような味、旨味です。おどろき。
     

 一度やってみようと思いますが、たぶん日本で手に入る瓶入りのペーストでも、トマトソースにちょっと加えるだけで、すごく美味しくなるのではないかと思います。イタリア料理の世界では、この二つのソースを混ぜる手法は、知られているものなのかも、とも思うのですが・・・事件、とも呼べる、味でありました。
 旅の楽しみって、こうやって出会った味を再現したりすることで、さらに続く気がします。こういう経験は、その後にぜんぜん違うところでひょっこり現れたりするものだと思っています。例えば私なら、やっぱり音楽をやる中で。それこそそのときには、隠し味のように、さりげなく使いたい。こうしたネタをストックするためにも、旅はやっぱり必要不可欠だと思っています。