衣装持ち

     

 昨日から思い立って、クローゼットの整理を始めた。まだほんの一部しか手をつけられていないが、早くもうんざり。

 うちは物の管理もお金の管理もきっちり夫婦別のなので、衣替えも、収納も、各自任せ。しかし夫の性格上、きっといい加減な管理をしているのだろうな、とは想像していた。今回はクローゼットの大々的な掃除も兼ねているので、初めて夫の洋服に触らせてもらう。

 どひゃーっ!!!なんじゃこりゃ?!どれだけあるんじゃ、いったい?!?スーツやジャケット類だけで40着くらいはある。コートだって10着はある。ネクタイに関しては優に3ケタ。チリも積もれば何とやらで、ネクタイをどかそうにも、重たくて持ち上がらない。

 バカじゃないか?こんなに買って。しかもすごいブランドものばかりなのだ。あきらかに一財産になると思う。独身貴族という言葉があるが、その言葉どおり、独身時代の長かった彼は、次から次へと、こんな高級な服を買っていったのだろう。どこに着て行くんだろう?自分のためにこんなにいい服を買える人って、すっごく自分のことが好きなんだろうな。すでにすっごく時代遅れな感じのものや、マフィアのドンでもこれは着んだろう、というような、パステルカラーの麻のスーツまである。この麻のスーツを着たら、ゴッドファーザーに出れる。っていうか、日本だったら、間違いなく警察に引っ張って行かれる。
 本当にお洒落な人は、数を持っているんじゃなくて、いいものを少なく持って、組み合わせを替えたり、小物で変化をつけたりするんだよ。(ってよく雑誌に書いてあるよ。)
 一方の私のものはというと、近年、私は着るものに関しては本当にどうでもよくなっていて、洗濯ができていればいいや、という感じ。良いもの、というのも、もともと持っていないし、流行もわからないし、お店に行っても、あまり着たいと思うものがないし、クリーニングに出したりするのも面倒くさいし、というわけで、安物の服を、がらがら洗濯機でまわして、自分の体の形に服が添ってしまうくらい、同じものばかり着ている。そして今回、夫を反面教師として、着ないものはさらに捨ててしまい、クローゼットの中身はほぼすべて夫の洋服になった。
 夫に服を捨てよ、とは言えない。たしかに見た目も、触った感じも、とても良い物だというのは私にもわかるので、これからも大事に着ていってほしいと思う。それにもうこんな高い買い物は、出来るわけがないのだし。