ポルトヴェーネレ

      

 岬の突端に建つ教会に行きたいと思いはじめて、十年以上が過ぎてしまった。
 東リヴィエラの終点といえばよいのか、つまりフランスから延びてきたリヴィエラ海岸の一番東にあるのがラ・スペツィアの町。そこからバスに揺られて30分で、ポルトヴェーネレの町に到着する。ここに私の憧れていた、岬の先っぽに建つ教会がある。

      

 サン・ピエトロ教会。白とグレーの横縞の、ジェノヴァ風ゴシックの古い教会だ。海のすぐ横にあるから、教会のまわりでも海水浴を楽しみに来た、水着姿の人がいっぱい。当然、この格好では教会に入れないけれど、なかなかめずらしい光景なのではないかと思う。
 教会内部は薄暗いので、窓から差し込むきらきらした海の光が余計まぶしく感じる。光とともに海風が吹き込んで、とても風通しがよく、気持ちの良い空間。教会にはいると、私はいつも息苦しさを感じてしまうから、海の開放感はやっぱり半端じゃないなと、あらためて思う。ごちゃごちゃ飾り付けてなくて、そっけない祭壇も、かえってその方が厳かなのではないか。
      

 旧市街は、土地が少ない街によくありがちな作り方で、建物を上に上に階を重ねて作るしかなかったから、どの建物も細長く、そしてそれが両脇に建て込んでいるものだから、細い路地は当然暗くなってしまう。でもそんなせせこましい通りに椅子を持ち出して、何するわけでもなくただぼんやりと過ごしたり、近所の人とおしゃべりしたり、みんなそれぞれにのんびりくつろぐ方法を知っているようだった。
      

 この細長い建物の裏側はどうなっているか。路地に面した建物の裏側には、海がひろがっている。海の輝きに負けないように、なのかどうかはわからないけれど、暗かった路地側とは正反対に、とてもカラフルな顔で建っている。
      

 このあと私たちは、ポルトヴェーネレからさらに船に乗って、チンクエテッレの村々へ。船のうえからサン・ピエトロ教会を見て、この教会も海側から見るのが本当の顔だ、と気づく。