大盛況

 昨日の夜、コンサートに出かけた夫は、一応関係者だったので、帰りは楽屋口から出てきたらしい。某愛知県芸術劇場の楽屋口は地下にあって、出てすぐのところから地上に向かって、ゆるやかなスロープがつづいている。スロープの脇は、歩行者用のゆるい階段になっているのだが、夫が楽屋口から出てきたとき、その階段をものすごい人数のおばさんたちが埋め尽くしていたそうだ。
 階段一段つき、5、6名のおばさんがきれいに整列してすわっており、それが延々地上までつづいている。そしてみんな手には、何かふわふわしたものや、ペンライトを持っているのだった。「いったいどうしたんですか?」と、その場をおさめている警備員に聴こうとしたそのとき、「きゃあ〜〜〜!!!」というおばさんたちの歓声があがった。
いっせいに階段から立ち上がったおばさんたちは、「きよし〜〜〜!!!」とさけびながら、手にしたふわふわとペンライトをものすごい勢いで振りはじめた。
 何が起こったのか、まったくわからない夫が後ろを振り返ると、さっきの楽屋口から、氷川きよしが出てきた。
「きゃあ〜〜、きよし〜〜〜!!!」「いやあ〜ん!白いズボンはいてるぅ〜〜〜〜!!!」と、おばさんたちのおぞましい悲鳴。
 そのおばさんたちの脇を通って地上まで出たとき、夫が目にしたのは、腰が直角に曲がったおばあさんが、きよしの階段めがけて必死で走っていく姿だった。これがすごかったらしい。
 地味〜に催されたクラシックのコンサートとはうってかわって、某芸術劇場の大ホールでは、氷川きよしオンステージが大盛況だった模様。