三浦くん

 先日、何の気なしにテレビをつけたら、もの凄いヴァイオリンの音色が耳に飛び込んできました。ただごとではない、と言っていいくらい、すっごい演奏です。どこか、やたらと狭い、木の壁にかこまれたコンサートホールで、弾いていたのは、まだ10代、とおぼしき少年。ぶっとびそうになりながら、テレビの前に、目も耳もくぎ付けになりました。
 いったいどんな主旨の番組だったのか、途中だったし、観る気もなくつけたら偶然出会った番組だったので、こんなとてつもないテクニックを持った彼がだれなのか、何もわからないまま、聴いていました。目も耳もテンになりました。
 一曲終わって、紹介みたいなのがあって、やっと名前がわかりました。三浦文彰君。ふーん、知らない。けど、すっごいよ、天才って言葉、こういう人の為にあるんだと思いました。
 彼のヴァイオリンをたとえるなら、ヴィルトゥオーゾ、というイタリア語の形容詞そのままに、超絶技巧、この一言につきると思います。超人技でした。何が起こっているのか、もう何もわからなくなるくら、凄い、という言葉しか出てこず、ひとり、テレビの前で興奮しました。
 「僕はいま、こうしたヴィルトゥオーゾ系の曲を多く弾いていて、それでもてはやされていることもよくわかっているけれど、ベートーヴェンとかブラームスとか、そういった曲もしっかり弾けるヴァイオリニストになりたい。」というようなことを、たった15歳の少年が、言葉を選びながら、ゆっくりと、しっかりと話すのを聞いて、私、しびれました。自分の立ち位置、みいたいなものも、あの若さで、しっかりと理解して、自分にはさらに何が必要か、ということもちゃんと分かっているようでした。演奏だけでなく、中身も、見据えている先も、フツウではない、立派な演奏家でした。
 とにかくびっくりして、あんなに弾けるんだから絶対コンクールとか入ってるんだろうな、と思ってあとでネットで調べたら、秋ごろだったか、日本人の男の子がハノーヴァーのコンクールに最年少で優勝した、というニュースが流れましたが、あれは彼のことだったのでした。ニュースでは演奏は流れないからね、おばちゃん、知らなかったの。ごめんね。
 いつかコンサートホールで聴いてみたい、そう思いました。三浦くん、おばちゃん、応援しているよ。