陳列上手

     
 よく買い物に行く、星が丘の三越の地下食料品売り場では、パプリカが危ない格好で売られているのを目にする。
 売り場のカゴの中のみならず端っこに、パプリカの茎の曲がった部分をひょいっとひっかけてサーカス状態。か、かっこいい、といつも感心して、うっとりと見ている。こんな陳列の仕方をする人、どんな人だろう、と思う。それだけではすまなくて、そのうつくしいポーズを他の人にも見せたくて、カゴの中にうまく納まっている最前列のパプリカをわざわざどけてまで写真撮影する、迷惑な人間もいるのだった。

 レジで支払いをして、いつも持っていくお気に入りの市場カゴに、買い込んだ食料を詰めていたら、おとなりで袋詰めしていた女性が「そのカゴ、いいですね。」と声をかけてくれて、しばしカゴ自慢をする。この子をほめてくれて、ありがとう。
     

 ぜんぜん話が変わって、JAL問題である。
 数年前、やむをえない事情で出席できない夫に代わり、夫の知り合いの娘さんの結婚式に私が出たことがあった。娘さん、と言っても、新婦は私と同じ年齢の方で、JAL社員。もともと優秀な方だったからだろうが、短大をでてから結婚するまでの十数年、JALに勤めつづけて、まだ若いと言っていい年齢や、女性であることを考えると、かなりいい役職に就いていたようである。
 当然その日の式、披露宴には会社の同僚や関係者、おそらく結婚や出産などですでに退職してしまった元JAL社員とおぼしき人がたくさん出席していた。私はもともと面識もほとんどない方の結婚式だったので、正直、何の感情もなく、ただいろんな人を一人、観察していたのである。
 JALの社員はそんなにエライのか?あるいは、あの〜、バブルはもうかなり昔にはじけちゃってますけど??と言いたくなるような、私からみると奇妙な華やかさの人たちだった。ただでさえ知ってる人もいない場所の居心地の悪さも手伝って、私は、運ばれてくる目の前の料理をヤケ食い。
披露宴の最後には、JAL社員の結婚式では絶対これをやるのだ、というなんかよくわからない儀式?のようなものを見せられ、(「幸せなお二人は、どんどん高度を上げて、急上昇中〜!」とかなんとか。)それが何の儀式なのかわからなくても、わからないヤツが悪いんだ、みたいな、私たちは置いてけぼり状態・・・

 で、今回の騒動を考える。何で会社がこうなっちゃったのか、あれほどのひどい経営状態になるまでなぜ放っておいたのか、詳しいことはもちろん私になんか難しくてわからない。でも、うまく言葉で説明できないけれど、あの日を思い起こせば、私には深く納得がいくような気がする。あの日、あの場所にいた社員の、自分たちに対して持っていた特別意識みたいなもの、そこら辺なんじゃないかな、と思う。
 厳しいようだけれど、私たちの税金を使って会社を再生させるのなら、一回きちんと潰してから、身奇麗になってからはじめてもらいたい。そうしないとあの人たちのあの意識は、変わらないように思う。