写真撮影

     

 先日の旅行会社から、「奥様のほうは、パスポートの期限がもうすぐ切れてしまいますが・・・」と連絡があった。そうなのだ、奥様はパスポートの更新をしなくてはいけないのだ。
 パスポートの申請といえば、当然写真が必要となるので、奥様はここはひとつ、自分で撮ってみようか、と無謀にも思いついた。今のパスポートの申請を行った10年前なら、私はパソコンもデジカメも持ってなかったし、(たとえ持っていても使えなかったし。)家で写真を印刷してしまうなんて、思いもよらないことだったが、時代とともに、こんな機械音痴の私でも、少しは進歩したということだろうか?
 免許書などの証明写真の自分の顔を、とても気に入っている、という人に出会ったことがないが、私とて例外ではない。自分の顔の造作は棚に上げて、何でこんな酷い顔に撮れたのか、と傷つきながら、その顔と何年も付き合っていかなければいけない。私が自分で自分の証明写真を撮ろうと思いついた理由も、ここにあった。自分で撮るなら、気に入るまではいかなくとも、ある程度納得がいくというか、あきらめがつくまで、何回もチャレンジできる。パスポートの場合は、お付き合いする時間が10年と長いのだ。やっぱり自分で撮ろう。
 まずインターネットで、パスポート用の写真のサイズなどの規格を確認する。す、すごく、細かい・・・顔のサイズとか、余白とか、ミリ単位・・・ムリかも・・・
 さあさあ、お化粧してー、上半身だけお着替えしてー、それから壁にかかった額をはずしてー、白い壁の前に椅子を置いてー、テーブルの上に箱を置いてー、その上にカメラをのせてー、タイマーをセットしてー、撮ってみる。やっぱりヘンな顔だ。これで10年は厳しすぎる。もう一回、いや、何回でも撮ってみよう。
 かなりの枚数が撮れたので、とりあえず、どうでもいい紙に印刷してみた。

 で、でかっ・・・顔、でかすぎ。そうか、ズームなんかきかせちゃったからでかいのだ。もう一回、いや、何回もズームなしで撮ってみる。
 で、また印刷。ち、ち、ちっちゃー。今度は小さかった。そうか、最初のズームと、ズームなしの中間でいってみよう・・・

 こうなってくると、もはや顔の写りなどはもうどうでもよくて、とにかく規定の大きさの顔にしなくては、ただその一点にのみに、目的は絞られる。頭のてっぺんからあご先までを、34〜36ミリの間におさめること、そこに写りこむ自分の顔がどうなっていようが、気にしてなどいられなくなった。

 こうして何度かの撮影〜印刷の試行錯誤を経て、やっと35ミリの顔が出来上がった。たっぷり午前中かかった。ちゃんと写真用の用紙に印刷しなおして、何度も定規で測りながら、やはり規定のタテ45ミリ、ヨコ35ミリの写真にカットして仕上げる。
 結論。パスポート用写真は、写真屋さんできちんとお金を払って撮ってもらったほうがよい。たとえ気に入らない顔になってしまっても、だ。自分で撮ったところで、どうせ気に入った写真など撮れない。証明写真とは、おそらくそういうものである。