マリさんが来る。

     

 昨日は、来週イタリアに出かける予定のマリさんが来てくれた。トスカーナをどうやってまわればいいか、この間から相談をうけていて、メールや電話ではとてもじゃないが説明しきれず、まどろっこしくなって、よかったら会いませんか、ということになった。
 マリさんはしょっちゅう旅に出ている。(例えば昨日もうちに来て、「1月はハワイに行ってきたの。」とさらりとおっしゃる。1月って・・・今年のですか?・・・先月はハワイ、今月はイタリア、で、来月は?と思わず訊きたくなる。)一人旅もぜんぜん平気なタイプ。年齢もかなり上だし、私なんかよりずっと旅慣れていて、なんと言っても経験の数が違うので、そんな人が私に相談なんて・・・と恥ずかしいような気もしていたのだが、わざわざ訪ねてくれることがうれしすぎて、俄然張り切ってしまった私は、なんちゃってミネストローネを用意。で今回も夕焼けモードで撮影したが、あまり夕焼けなかったね。
 トスカーナはきっとレンタカーの旅が正解なのだ。すぐそこなのに交通手段が皆無、という理由で取り残されている場所は、私にもたくさんある。でもクルマの運転は日本でもとんでもないので、ましてやイタリアでなんて。マリさんもクルマはムリというから、バスや電車でまわれる町を挙げて、時刻表とガイドブック片手に、我ながらなかなかよろしいと思われる旅程を組んだ。話はいろんな方向へとんで、すぐに脱線するので、気がつけば6時間くらいしゃべりどおしにしゃべっていた。
 マリさんと最初に会ったのはミラノでだった。何年かに一度、という感じで、今でもわりとコンスタントにミラノを訪れているマリさんは、私たちのお互い共通の知り合いのこともよく知っていて、昨日もその人たちの近況について、話がおよぶ。これがなかなか、みなさん大変そうなのだった。
 もう帰ってくればいいのに、と思う。帰ってくるしかない、と思う、一日も早く。もう自分には、この国でやることは残されていない、と悟って、長いミラノでの生活にピリオドを打った須賀敦子さん。あれほどの才能を持った人でさえもやることがない、と思ったのだから、ましてやフツーの人には・・・と失礼ながら思う。あなたは誰ですか?あなたは何ジンですか?あなたのやるべきことは何ですか?あなたがそこで本当にやりたかったことは、今やっているそれですか?そういう本質から、目をそむけて生きてはいけない。
 夕方、夫帰宅。20年以上前、13年暮らしたミラノを引き払って帰国した彼に、思わず、「よく帰ってきたね。」と声をかける。