どたばた帰国劇 2

 こんな事態になることを、まったく予想していなかったわけではなかった。何日か前に見たニュースでは、火山の噴火がまた活発化し始めたと言っていたし、帰国前夜、ミラノのレストランで食事をしていたら、たまたま私たちの隣のテーブルに座ったのが日本人の年配のご夫婦で、旅行中のお二人はその日、ミラノからスペインに飛ぶ予定だったが、火山灰が南に流れてきていてスペインの空港が閉鎖。ミラノの空港まで行って、飛ぶの飛ばないのというすったもんだが数時間もあって延々と待たされたあげくに、結局行けず終いだったのだそうだ。明日、大丈夫かなあ・・・という、私たちの心配は的中したようで、スペインの火山灰が、翌日にはイタリアヘ・・・


    

 空港に着いて、チェックインカウンターへ一目散。しばらくすると、係の女の人が対応に出てきたので、なんだ、飛ぶじゃん!と簡単に思ってしまったが、甘かった。手渡されたのは、無料の朝食券。飛行機はもう前の晩からミラノに到着していて、それで折り返しフィンランドに向かうはずだったのだけど、空港が閉鎖されていては飛行機は飛ばせません。とにかくもう一度、お昼前にこのカウンターに来てください、と言われる。

    


 同じ飛行機に乗るはずの日本人が10人くらいいたが、その人たちは、今、自分たちがいる空港が閉鎖されていることすら知らずに、ただ日本に帰れるとだけ思ってそこに来ていたようなので、状況を説明するとアワを噴きそうになっていた。「あの、あの、飛ばなかったら、チケットは自腹で買いなおさないといけないんですか?」「もしここからの飛行機が飛んでも、ヘルシンキの乗り継ぎ便に間に合わなかったらどうすればいいんですか?」等々、矢継ぎ早に訊いてくるが、そんなこと、私たちに訊かれてもわかるはずがない。とりあえず、チケットを買いなおすようなお金は私たちは払う気はないので(っていうか、そんなお金は持っていないので)、とにかく航空会社に交渉して、どうにしてでも乗せてもらって帰るつもりです、と私が自分の考えを話すと、どうか自分たちも一緒に連れて帰ってください、と頼みこまれ、私はミラノから、団体旅行を率いる添乗員みたいになってしまった。
 さて、いつまで待てばいいのだろうか。とりあえず、みんな食料の心配をしたようで、手渡された朝食券を持っていっせいにバールに向かったが、この場合、食料よりも、座れる場所の確保が先である。もうすでに空港には、私たちと同じような空港難民となりつつある人たちがあふれていた。日本を出る前の噴火騒動のときにテレビで映し出されていた困った人たちに、とうとう自分がなってしまった・・・