リニューアル

        


 先々月の今頃は、ぎっくり腰で寝たきり状態にいた私。夫はかいがいしく家事をやってくれていたが、ある日、寝室で横たわる私の耳に、ガタン、という何かが落ちるような音が。
 音の出どころは、間違いなく台所。階下に向かって、「どうしたかー?」と、腰以外はいたって元気な私が叫んだのだったが・・・

 コーヒーを淹れようとしていた夫は、うっかりマッキネッタ(エスプレッソマシーン)に、水を入れるのを忘れて、そのまま火にかけてしまったそうです。待てども待てども、コーヒーが出てくるときの、ボコボコいう音がしないんだって。さすがにこんなに時間がかかるのはおかしいなと思って、マッキネッタを火からおろそうと持ち上げると・・・ぐにゃー・・・。熱で溶けた取っ手が曲がって取れてしまい、マッキネッタが落下。私が聞いたのはその音だったのでした。

 夫が昔から、だいーじに使っていたマッキネッタは、もう20年選手?めちゃめちゃ汚いこいつは、元はアレッシのクーポラというエスプレッソマシーンで、今も販売されていると思いますが、店頭にならぶピッカピッカの新品を見たら、誰も同じモノとは・・・
 「部品、あるかな?ビアレッティおじさんのマッキネッタだったら、イタリア行けば簡単に見つかるけどね。アレッシの部品って、どうだろう?」

 この間の旅行で、探しました、クーポラの取っ手だけを。アレッシの製品を置いてある店に入っては、3人用クーポラの取っ手だけ、ありませんか、と。なんかごちゃごちゃしたモノが雑多に入った箱を取り出して、店の人が探してくれます。あー!あった!!けど、でかっ!(6人用。)うわ、今度はちっちゃい!(これは1人用。)貴重な旅の時間を、こんなことに費やすのも虚しい、と思い始めたのと、こういうわがままな注文って、日本のデパートならOKじゃない?と気づき、途中でやめました。

 ああ、やっぱり親切な日本の百貨店よ、ありがとう。「メーカーに在庫がなければ、イタリアからお取り寄せいたします。」って、そんなおおごとになるんですか・・・スミマセン・・・
その後も「○日には入荷の予定でございます。」と丁寧な電話が入り、「本日入荷いたしました。ご来店をお待ち申し上げております。」とまた電話が入り、まさにいたれりつくせり。こんなにしてもらって、いったいいくら取られるのかと心配していたら、「お値段のほうは、630円となっております。」って、そんなに安くていいのか?!(取りに行く電車代のほうが、高かった。)

 でめでたくお直し完了。取っ手のブルーだけが、若くてまぶしい。
もうひとつの、火事に遭ったのかと思うくらい真っ黒になっているのは、定番ビアレッティのマッキネッタ。夫に、いつから使っているか訊ねると、紀元前から,と。その使用年月の長さの賜物か、こっちで淹れたほうが美味しい。
 エスプレッソマシーンこそ、育てる台所道具だと思います。