ありえない話 1

 私の書く旅行ネタは、「あー、楽しかった!」や「私、こんなにも幸せ・・・」という内容よりも、「私ったら、やっぱりこんなに不幸な人間だったのね・・・」といった内容のもののほうが、読んでくださっているみなさんに愉しんでいただけることは重々承知しております故、今回の旅でのトホホな話題を。

 いろいろありながらも、どうにか無事旅を終え、ミラノのホテルへ。泊まったのは、5月に行ったとき宿泊したホテルのすぐ向かいにある、同じグループチェーンのホテル。こないだ泊まったホテルでもよかったのだけれど、微妙に今回利用したホテルのほうが値段が安かったこと、前回のホテルには満足していたので、同じグループのホテルなら、サービスや部屋についてもそれほど差がないのではないかと考え、空港バス乗り場からすぐの利便性もメリットだったので、ここをチョイス。名前も、Starhotel Splendido スターホテルスプレンディド。スプレンディドは、光りかがやく、とか、スバラシイ、みたいな意味。

 が、ホテルスプレンディドはスプレンディドなホテルではなかった。

 今回、ミラノ到着時にもここのホテルを利用して、大きな荷物をホテルにあずけて、あちこち旅をしてきて、再びミラノから帰国すべく最後の2泊をこのスプレンディドに予約していたのでありました。

 まずその1泊目。バスルームにシャンプーがないので、お掃除の人がセットし忘れたのだと思って、そこらへんをうろうろしていたホテルのお兄さんをつかまえて頼む。しばらくして、シャンプー1個、部屋に持ってきてくれた。2人なのに1個?とは思ったのだけれど、ともかく持ってきてくれたわけだし、あまり細かいこと言うのも大人気ないので、これでよしとする。
 つづく2泊目。お掃除の人は入った様子なのに、またシャンプーが置いてもらえてないではないか。今度はフロントまで降りて、クレームを言いに行く。「あのね、私の部屋、シャンプーがないんだけど。ついでに言うと、昨日もなかったんだけど!」と強めに出ると、「だって、今、シャンプーないんだもの。」という開き直った返事。へっ??シャンプーが、ない、とは・・・?

 意味がよくわからなくて黙っていると、「石けんならわけてあげるけど。」と言って、石けんが山ほど入ったビニール袋を出してきたので、「石けんはあるの!私の言ってるのはシャンプー!!!」とキレ気味に言うと、「だからー、シャンプーは今、切らしていてないの。」と言う。「まったくないの?」と訊きかえすと、「まったくないの。」とこれまた居直ってオウム返し。

 よく状況が飲み込めぬまま、仕方なくエレベーターで部屋へ戻る途中、お掃除の女の人にあったので、この人なら!と思って訊いてみる。「あのー、私の部屋にシャンプーが置かれてないんだけれど、もらえるかしら?」
するとお掃除の人は、「シャンプーがねえ、今、切らしちゃってないのよ。」とやはりフロントと同じことを言う。「1個もないの?それって信じられないんだけれど。」と言うと、「ほんとに1個もないのよ。よかったら、一緒に見に行ってみる?たしか、もう1個も残ってないのよねー。」と言いながら、私をリネン室まで連れて行った。

 中の棚のところまで行って、「いつもはここに置いてあるんだけどねえ。ほら、ないでしょ。業者が日曜日で閉まっててねえ、電話したって持ってきてもらえるわけではないし、来週にならないと、シャンプーは来ないねえ。」

 部屋に戻って、少々怒りながら夫に説明したけれど、「ふうん。」という反応だった。髪の毛の少ない人にとっては、シャンプーがあるかないかなんて、そうたいした問題ではないのかもしれない。

 私が怒っていたのは、到着時もここのホテルを利用しているし、前回の旅行のときも同じチェーンのホテルを使っているので、このホテルで当然受けられるサービスの内容を知っているため、それが満たされていないことへの不満と、あとやっぱりその不備に対して謝らないどころか、客に居直った態度で接したこと。

 どっちにしても、ぜーんぶ在庫がなくなる前に注文するだろうよ、それ、基本、と日本人ならそんなカンタンなこと、気がつくんだけど、そうじゃないのがイタリア人なんだよなあ。でそんな国、イヤなら行かなければいいのに、喜んで何度もうほうほ行ってしまう自分が、いちばんバカだよなあ、とつくづく思う。