路上観察 2

 去年も訪れた、北イタリアのある町。気に入ると、たいてい次の年も同じところに行く。で、たいてい2度目で、ま、ここはこれでいいか、と落ち着く、というのが、どうやらうちの旅行パターン。

 街の旧市街を歩いていて見つけた、とても小さくて狭い坂道が気になって、歩き始めたのだった。石壁に囲まれた、ゆるやかだけどずーっとずーっと続くみち。本当は歩き切りたかったけれど、矢印の先に書かれた地名からすると、おそらく一時間以上の行程になりそうなので途中で断念。べつに有名な通りでも、特別景色が素晴らしいわけでもない道だったけれど、案外旅が終わってからふっと思い出す、記憶の断片みたいなものって、こんな何でもない道だったりする。その先に何があるか、確かめられなかった、となればなおのこと。この小さな坂道は、これからもずーっと私の記憶の底に残って、ときどき静かに私を揺りうごかせるかもしれない。

 そのゆるやかな坂道をのぼる途中にぽつん、と置かれてあった自転車。意図するものが、ありそうでなさそうなところがとてもいい。
     


 同じ街で、今度はバスの発着所らしいところの前を通りかかった。ふうん、こんな街から、ミラノまでの直通バスなんて出てるんだ→何時間かかるんだろう?→きっと安いから節約にはなるだろうな・・・などと、くだらないことを考えていたら、そのすぐ横の看板に目がとまり、しばし立ち尽くす。
     

 バスに乗って、みんなで栗を、トリュフを堪能しに行きませんか?というポスター。いいねいいね、いいよいいよ。ああ、寒くなる前の、秋の北イタリアも、なかなかシックでシブイんだよなあ・・・思い出すだけで、胸がきゅーんとするよ。
 私は、75ユーロのトリュフツアーのほうで、どうかよろしくお願いします。