色づきました。

      

 イタリアとかフランスとか、ヨーロッパで見かけるツタの絡まる建物の様子が好きです。作りこんだわけでなく、自然に任せといたらそうなった、という風情、うーん、なんでそんなに上手くいくの?といつも感心して思います。マネできそうで、でも実際やってみたらぜったい自分では上手く行きっこないことも、重々承知しています。

 昨年の春、トスカーナを旅行したときに(4月5月のトスカーナの美しさなんて、もうそれは言葉にならなくて、ずーっと夢見心地の旅でした。)、モンテプルチャーノに立ち寄りました。街に点在するカンティーナとよばれる、いわゆるワイナリーを見せてもらったりしながら、あてもなく歩く旅。Gatta Vecchi ガッタ・ヴェッキというわりと大きなカンティーナでは、藤の花がちょうど満開で空からこぼれてくるように咲いていました。その帰り道、道路わきのガードレールに絡まっている何でもないツタの先端を、チョンと数センチ、いただいてきたのです。ホテルに滞在中は水に挿し、飛行機に乗るときは、水にぬらした化粧用コットンで切り口を巻き、つぶれないように箱に収めて、こっそりと大事に持って帰ってきたのでした。
 
 あれから一年半。最初の根が出てくるまでは水に挿し、その後、鉢に植え替えて大事に大事に育てました。昨冬は葉っぱが全部落ちて(考えてみたら、ツタってそういうものですけど。)枯れたツルだけが哀れに残って、「死んでしまったんじゃ・・・」と私を心配させたけれども、あたたかくなったらちゃんとたくさんの葉っぱをつけてくれました。

 そして今、見事に赤く紅葉した姿に、お母さんは心まであたたかくなっています。ありがとう。
 この冬、また死んだフリをされるかもしれないけれど、もうお母さんは慌てない。そして春になったら、もっと広いところに植え替えてあげましょうね。大きく大きく、ヨーロッパのツタに負けないように、素敵な子に育ってください。