恒例行事

     

 先週から、夫は学生さんのオペラ公演で気の毒なくらい忙しそうだ。仕方がない、師が走る、と書いて師走なのだから。がんばれ、夫。

 先週末のその公演を、私もめずらしく観に出かけた。いつもなら、「疲れるだけだから、来なくていいよ。」と言う夫が、「今年のオペラ、おもしろいよ。」と言うし、夫の生徒さんもたくさん出るというので。ギリギリになって、チケットの手配を頼む。渡されたチケットの席は、ひょっとしたら隣が先生だったりするかもしれないけど・・・と言われ、やっぱり行くことにしたのを少々後悔する。知らないおエラさんならちっとも構いはしないけど、ちょっと知ってるすごくイヤな先生なんかと、何時間も一緒に座ってオペラ観るなんて、勘弁してほしい。

 でもそれは私の勝手なわがままね。さあ、いつぞやある方から、「オペラを観に行かれるときに、どうぞお使いください。」と言ってプレゼントされた、とーっても立派なキンキラキンのオペラグラスを持って出かけるのだ!プレゼントされたときは、内心、「わたしゃ、オペラなんか観に行かないよ。」と思っていたのだけど、ちゃんとそういうときも来るものじゃないか!そうだ、今日はこのオペラグラスをデビューさせるために!と、必死で自分のテンションを上げて出かけたのだった。

 が・・・なんと!席が!!!一階の一列目!!!一番前じゃないか!

 どうする?オペラグラス・・・この距離から使うのか?

 そして開演直前になって、隣の席に人が来てしまった・・・おそるおそる視線を上げ、顔を見る・・・なんだ、夫じゃないか。

 オペラは素晴らしかった。堪能した。一列目からオペラグラスで、ひとりひとりじっくり観察しながら聴く。若い人たちの、流れる汗のすじまでが見えて、おばちゃん、なんか感動する。「あの落ちこぼれが・・・」と、昔、へなちょこだった子が、華やかな舞台で生き生きと歌う姿を見て、胸がじーんとする。相撲部屋のおかみさんも、こういう気分なのだろうか?(注・相撲を引き合いに出したのは、出演者の体格がいいから?というわけではない。)今日のこと、ちゃんとお母さんには知らせてるよね?母ちゃん、こんな姿みたら、泣くぞ。
 学生さんのオペラであれだけのものって、なかなかないんじゃないかな?毎年観てたわけではないけれど、間違いなくこれまででも一番良かったはず。指揮も演出もすごく良かった。舞台と同じくらい、すぐそこの、オケピットにいる指揮者に釘付けだった。(もちろんオペラグラスで。)ちゃんと歌のこと、音楽のこと、わかっている人。そしてたぶん実際に歌える人。よくあるような、自分が目立ちたくてやるパフォーマンスのような指揮ではなくて、実直な人柄が出たような、とても好感の持てる指揮だった。

 明日は某市にて引越し公演。成功をお祈りします。