ミュゲさんにて

     

 muguet du premier mai フランスでは、5月1日のスズランは幸せをもたらす、といわれると聞いたような・・・うっかりしていたら見過ごしてしまいそうなくらい小さくて、でもとっても素敵なミュゲさん(←勝手に私がそう呼んでます。)は、とても静かに、静かなものばかりを置いている、私の大好きなお店です。

 と言いながら、すごく久しぶりだった。ここに来るときはいつもそうなんだけど、この間は久々すぎて、さらに胸の高鳴りが大きいように感じました。軽く深呼吸して、ドアノブを回します。好きなものがいっぱいの空間に入る前、少しでも冷静に、冷静に・・・

 けっしてたくさんのものが置かれてあるわけではないんです。でもそのひとつひとつは、オーナーさんの目をとおして選ばれ、すごくいとおしく思われているものばかりだなと感じさせるあたたかさが、この空間にはあります。やさしいものたちがいちばん素敵に見えるように、それぞれにふさわしい舞台をあたえてもらっているかのように、大切に並べられています。

 元は錆びた鉄くずだったのでは?と思われる、鉄のプレートをいただいて帰りました。加工するには扱いにくいであろう素材を、お皿の形になるように、これを作った人はきっと苦労したんじゃないかな、と思わせるいびつさに、なぜか惹かれました。渋い錆び色のプレートに、みかんとか柿とか、オレンジ色の果物を盛りたいと思った。

 そして忘れてはいけないのは、ミュゲさんに置かれていたときの姿。うちに帰って使いはじめてからも、このお店に置かれていたときどんな様子だったか、その静けさを時折思い出して、減らず口の私がその姿を捻じ曲げてはいけないと、いつも心にとめて使わせてもらっています。