失敗例

 

 寒すぎて、ちっとも良くなかったイタリアの旅をご紹介。(どうしてそんなものをご紹介?)

 12月の南イタリアの旅。ローマからサレルノパエストゥムアマルフィへと。アマルフィまで行ったついでに、リゾート地として有名なポジターノまで足をのばした。

 この日はめっちゃ寒かったうえに、あいにくのどころか、どしゃ降りの雨。(何度も書いておりますが、はい、わたくし、雨女でございます。)坂道でバスを降りて、少し歩けば、よく目にするTHE ポジターノの風景があらわれた。よりによってこの場所を訪れたときにこんなにお天気が悪いのは、普段の私の心がけの悪さゆえか?ともかく街をめざそうとするも、このときの雨は、数歩歩いてたら靴のなかまでびちょびちょになるくらいの、もう何をしに来てるんだかわからなくなるくらい、容赦ない降り様。

 ファサードの、肝心要のバラ窓のステンドグラスが割れてしまっているドゥオーモをチラ見して、ともかく海までは行ってみる。が、風は強いわ、冷たい雨に横殴りにされるわ、ひたすら厳しく、ただただ哀しいブルーグレーの海が広がるのみ。

    


 もう1分、いや、数秒でも外にはいられない、となって、海岸にあったバールで暖をとる。夫は赤ワインを、私はチョコラータ・カルダに生クリームをどっさりのせてもらい、エネルギーを補給し、体温をあげ、九死に一生を得る。

    


 あとは何もしなかった。いや、できなかった。学生時代の先生が、ずーっと昔、亡くなった主人と新婚旅行にポジターノへ行ったの、とてもいい思い出よ、と話していたので、その先生に絵葉書を買って帰るのだけは忘れなかった、それも寒さで凍えながら、死ぬ思いで。(←大袈裟。)

 季節だったり、その日の天候だったり、あるいは自分の体調や食べたものが美味しかったか美味しくなかったのか、ホテルやお店で嫌な思いをしたとか、そういうことでずばりその街、旅そのものの印象が決定づけられてしまうことがよくある。とくに季節はすごく大事だ。こんなグレーなポジターノしか知らない人なんて、自慢じゃないがそうはいないと思う。ポジターノには良い思い出がひとつもないので、いい時期にもう一度行ってみたいな、とすら思えない。私のポジターノは、永遠にどしゃ降りのままだ。