第2の・・・

     

 年末に帰省した折、両親から「タジン鍋、いらんか?」と訊かれたので、「いらん。」と即答した私に、「なんで?!」とおどろく父と母。

 だって、この前タジン鍋はいただいてもう持ってるし、で実際使ってみたら、どうやらタジン鍋というものは、鍋とフタの間から水蒸気がじゃんじゃんもれてガス台がとっちらかる鍋だということが判明してから、すっかり使うこともなくなってしまい・・・(いただいた方には申し訳ない話ですが、哀しいかな、事実であります。)

 というような言い訳を両親にしたところ、「ガス台が汚れる?水蒸気がもれる???」という反応なので、こちらのほうがびっくりしたのでした。

 私の父は陶芸家です。で、何を思ったか、この冬、タジン鍋を作ることにしたそうです。本物のタジン鍋がどういうものか、たいして知りもしないのに、です。つまり、本物のタジン鍋は、はっきり言っていい加減な作りのために、水滴が鍋からジャンジャカもれることも知らず、「きちっとフタが密閉できる鍋にしなくては!」と密閉度抜群の鍋を作りあげました。だから、これはタジン鍋ではなくて、タジン鍋風の土鍋、というのが正しいのかもしれません。

 父が作ったものだと言うし、ちゃんと料理できるというので、いただくことにしました。(っていうか、私にすごくもらってほしそうだった父と母。ついでに、同じく父親作の、「超特大、超重量級の3合炊きごはん鍋」もいらんか?と勧められましたが、丁重にお断りさせていただきました。)実際使ってみて、ぜーんぜん水滴はもれることなく、その意味では完璧で、タジン鍋ではないけれど、鍋としては私はこちらのほうが使いよかった。

    


 直火用の鍋のための粘土は、普通のものより値が張るのだそうです。で、父は、実際、店頭で売られている大量生産されたタジン鍋を見て、自分の場合は、「材料費はかかるし、ひとつひとつ手で作る手間も考えると、とてもじゃないがこんな安い値段では売れない。」と思ったそうです。

 だから父は、「みんなにあげることにした。」と。

 
 「タジン鍋、ほしいか?」と知り合いの人にたずねては、「ほしい。」と答えてくれた方に、作っては差し上げ、作っては差し上げる父であります。