ポルトフィーノ

     

 「ヴァカンス、どこに行った?」と訊いておいて、その答えによって相手の足元を見る、というようなところが、イタリア人にはあると思うんですけど、私の偏見でしょうか?もっと言うと、彼らにとっては、どこでヴァカンスを過ごしたのか、そのこと事態がステイタスにもなるようで、「昨日まで、ポルトフィーノに行ってたんだけど・・・」と話す、ぜったいにポルトフィーノなんかに行ったことないだろ、みたいなおばさんを目撃したこともありますが。

 リグーリアのリゾートとして、今ではすっかり有名になりすぎたポルトフィーノ。ずっと昔はきっと、小さな海辺の集落にすぎなかったのかもしれません。ところが、やれグレース・ケリーだの、イングリット・バーグマンだの、と言った有名人がここに目をつけたため、今やイタリアきっての高級リゾート地となってしまいました。「ポルトフィーノに行ってきた。」なんて言ったら、私はステイタスどころか、ミーハーかおのぼりさん、みたいに思われる気がして、なんか恥ずかしいのだけれど。それでも行ってみると、やっぱりすーっごく素敵な場所なのです。Portofino という地名まで日本語になおす必要はないと思うのだけれど、その名があらわすとおり、本当に上品な港がある、隠れ家のようなリゾートなのですから。

     

 ここを訪れるお金持ちなら、当然自家用クルーザーか何かで、なのでしょうが。フツーの人が行くなら、サンタ・マルゲリータから船、といったところが正式でしょうか?正式というのは、私なんかはその船代ももったいなくて(というよりは、持ってなくて?)、サンタ・マルゲリータからバス(それも街中を走るような市バス)に乗って、100円くらいで到着したことがあります故。(バスで来たのは二度目のことで、初めてのときはサンタ・マルゲリータから船、の、正式ルートを使いました、念のため。)
 そのバスで来たときには、まさに街の裏口というのか、海などどこにも見あたらない、街の裏手にある小さな広場に到着したのですが、その広場に、一台のワゴン車が停まっていました。ワゴン車の後ろのトランク、っていうんですか、開くと荷物が積んであるのが見えたのですが、なんと・・・ものすごい数のルイ・ヴィトンの箱型トランクが山積みに・・・それらを次から次へと運んでいるのは、アラブ系の人たちで、「きっと、石油王のヴァカンスか何かだね・・・」と、まだ結婚する前の夫と唖然としながら話したのでした。

 街のなかは、はっきり言ってそう愉しくありません。(お金があれば、話は別だと思いますが。)だって並んでいる店は軒並み、ヴィトン、エルメスアルマーニ・・・といった具合ですので。ちなみに、お茶でもしよっか〜、というのも要注意です。昔、夫と、カッフェ・アッフォガートという、アイスクリームにエスプレッソがかかったデザートをひとつずつ頼んで、3000円也。ほかに、お昼に食べたリゾット、2人分で7000円也。卒倒しそうになりました。今ならまだしも、まだリラの時代のことですからね、相当高い印象でした。ちなみにお味は、言うことなしの絶品でしたけどね。

 港を背にして右側にある、坂道を登って行きました。ポルトフィーノの港が高台から見渡せる場所があります。(写真下)ここで撮った、作家の須賀敦子さんの写真を、本の中でみたことがあります。夫に、「同じようなの、撮って!」と、びしょぬれの水着の上に汚いTシャツを重ね着した、アホみたいな顔の私の写真は省略いたします。
   
      
 
 そのすぐ先に立つ教会が、印象に残りました。
     
     
ポルトヴェーネレに行ったときもそうでしたが、何故、海の近くの教会って、こんなに気持ちがいいのでしょう。こんな場所で祈れば、晴れやかで、すがすがしい前向きな気持ちに、誰だってなれるような気がします。
        

 ちなみに、これらの写真は3度目のポルトフィーノでした。このときはまたイレギュラーで、ホテルのフロントに張ってあった、ツアーの広告が目に入り、リグーリアのある街から船に乗って、途中でも別の街の港でお客さんを拾いながら、サン・フルットゥオーゾ、ポルトフィーノをめぐり、そのまま、またお客さんを降ろしながら帰っていくツアーを利用。手軽に参加できて、めんどうくさいことも一切なし、効率よく行きたいところを回れるので、たまにはこういう手段もアリだな、と思います。