夢の話

 昨日見た夢。超ヘビー級だったため、その夢のことが頭からはなれず、どよよんとしたまま一日を過ごす。

 夢のなかで、私は、ほかに結婚したい人がいるので、離婚してもらえないだろうか、と夫に頼みこんでいるようだった。夫は多少ショックを受けたようだが、深いことは何も聞かず、本当に(私が)そうしたいのなら・・・と、私のわがままを許してくれた。

 私の再婚相手は、作曲家のじいさんだった。(夢なんだから、若い子にしたら良かったのに。)じいさんは、とても良い人だった。やさしいうえに、何か社会の役に立つことがあったら何でもしたいし、困った人がいたら自分の出来る範囲で何でもして助けてあげようというような人だった。私は、元夫(←現実では現夫です。)がどちらかといえばかなり悪人であったため、その人の良いじいさんとのギャップに驚き、「このじいさんのような善人よりも、やはり元夫のような悪い人のほうが、自分には合っているのではないだろうか?」と思いながらも、じいさんと表面上は平和に暮らしていた。
 じいさんは、事務所のような、殺風景な部屋に住んでいて、インテリアなどにはまったく頓着ないようだった。というより、自分の身の回りのものに金を使うなら、人のために使いたい、という人のようだったので、私はその住まいが自分はまったく気に入らないことを言い出せず、そのしょんぼりハウスに暮らすよりほかなかった。そして元夫はじいさんとは仲良しで、じいさんのことを尊敬しているフシもある、という設定になっており、私の新居にたびたび元夫がやってきては、じいさんと3人で食卓を囲むのを、なんかおかしいなあ、と私は思うのであった。

 じいさんの書く曲は、その人柄を反映してか、とてもきれいでやさしい音楽なのだが、パンチがなく、ただきれいなだけ、以上、というのが私の感想で、そういうところも、しょんぼりハウスと同様に、私が少しずつじいさんのことがイヤになっていく原因であった。やっぱりアク(悪?)が強くても、自分には元夫のほうが合っていたな、と、再婚したことを後悔し始めた。

 そんな折、たしか、じいさんの弟子だかに、お金がなくて車が買えず、移動手段に困っているという人がいて、じいさんは私に相談することなしに、その弟子とやらに何十万もするバイクを買ってあげていた、ということが発覚した。私は、何でそんな高いものを、自分に相談することなく買ったりするのか、と怒ったが、その人がお金がなくて困っているのだから、買ってあげて当然だろう、というのがじいさんの言い分だった。そのことから、じいさんは、こんな風にたくさんの困った人に施しをするのはしょっちゅうで、じつはほとんどお金を持っていない、ということを知った。この時点で私は、こんなに食い違いのある人とは、もう一緒には暮らしていけない、となり、しょんぼりハウスを飛び出した。

 あてもなく飛び出した私は、どこかの駅のホームで電車を待っていた。そうしたら突然、目の前で、一人の若い男性が線路に飛び込み、自殺をはかろうとする、大変な事態が起きた。電車はもうすぐそこまで迫っている。私以外のまわりの人はその男性を助けようと、みんな次々線路に入っていったが、私は自分の命が惜しくて、そのままホームでただ見ていた。男性は、電車が来る前にみんなに助け出されたが、私は、自分もこんな風に電車に飛び込むことになる前に、(元)夫のところに戻って謝り、もう一回やり直させてもらおう、と、ムシのいい決心をして、夫の家(今、自分の住んでいる家です。)に向かった。

 まだ続きます。

 夫の家に入ると、びっくりしたことに、そこにいたのは夫と、夫の再婚相手だという、とてもおとなしそうな、さえない女の子だった。あまりにぱっとしない感じなので、嫉妬心もわかず、何でこの子なんだろう?と不思議に思ったが、その子の前であることもおかまいなしに、私は大泣きしながら、もうあのじいさんとじゃやっていけないから、もう一回ここに戻らせてほしい、と頼んだ。すると夫は、思いつきで結婚するなんて、最初から上手くいくわけがないことはわかってたよ、でもそれは自分で選んだ人生なのだから、責任持って生きていきなさい、というようなことを言った。
 やっぱりこんなわがままは聞いてもらえないか・・・と思いながら、私は猛烈な空腹に襲われていることに気がつき、その旨を夫に伝えると、夫も女の子も、同じようにお腹がすいていると言った。「だけど、何にも食べ物がないんだよ。」と夫が言いながら冷蔵庫を開けたら、ジェノヴェーゼのペーストが瓶に少し残っているだけだった。
「そんなこともあろうと思って・・・」と言いながら、夢のなかの私は、まだ開いていないジェノヴェーゼのペーストの瓶と、「トマト味のほうがよかったら・・・」などと言いながら、トマト缶や野菜など、パスタの材料を取り出した。どうして「そんなこともあろう」とわかっていたのか、夢を見ている私は、夢のなかの用意周到な自分を不思議に思っていた。

 女の子はぜんぜん料理ができない風だった。なので、勝手知ったかつての自分の城であった台所で、私がパスタを作り始めた。こんなごはんも作れない女の子と結婚して、いったいこの先どうするんだろう、と夫のことを不憫に思い、私は「やっぱり晩ごはんだけは、じいさんちで女の子もまじえて、みんなで食べないといけなくなるな。」と考えはじめていた。
 私が料理を始めると、女の子は、ピアノでヴォラーレを弾き始めた。それに合わせて、私が身体を揺すりながらタマネギの皮をむいていると、女の子は、「ここはもっと速いテンポで踊らないとダメでしょ!」ととてもキツイ口調で私に言い、私は何故かものすごく厳しいレッスンを受けながら、パスタを作っていた。どうしてこんなミジメな人生になってしまったのだろう・・・と、悔やんでも悔やみきれず、こっそり涙を流す私・・・

 記憶に残っている夢のストーリーはここまで。
 朝、目が覚めていちばんに、夫にこの夢のことを話したが、彼の気になるのは、自分の再婚相手の女の子のことらしかった。
「どんな子だった?」と訊いてくるので、「ぜんぜんたいしたことなかったわ。」とだけ言ってやった。