午後11時58分

     

 買い物に行ったら、とてもきれいな梅がお値打ちに売っていたので。今年も梅サワーを漬けようと思う。何年か前から漬けるようになった梅サワーは、梅を、酢と氷砂糖に漬けておくだけでできるドリンク。水や炭酸水で割って飲む。酢が入っているので、梅シロップよりはずっと酸っぱくて、そしてシャキッ!と元気になれる、我が家の夏の飲み物。これから暑くなる前に、今年も夏バテ知らずで過ごせるように、と。しかし今日は、夕方、レッスンが終わったらドロドロに疲れていたので、作業は明日に持越し。

 今日のタイトルと梅とはまったく関係ありません。じつは先日まで、ある問題をかかえてノイローゼになりそうだった私。その一件が解決いたしましたので、あまりの嬉しさに、その一部始終を今日の記事に。

 先月の半ばあたりから始まったでしょうか?いつから、と、はっきり日にちを覚えていないのですが、不思議なことが起こるようになりました。夜、11時過ぎにはベッドに入って、眠りにおちてまだそんなに時間が経ってないころに、ある音で目が覚めるのです。寝ぼけているのと、その音は何度か鳴ったあとに自然に止まるので、最初は電話の音と思い込んでいました。「もう誰?こんな時間に!」と一瞬腹を立て、しかしまたすぐに眠ってしまい、朝にはそんなことがあったことも忘れているのでした。

 ということが、何日もつづきました。明日の朝こそは、あの夜遅くの電話のことを、起きたときに夫に言おうと思うのだけど(鈍感な夫は、多少の音で目を覚ますことはありません。)、朝起きると、ボケボケの私はまた忘れてしまいます。

 それからまた何日経ったでしょうか。やっぱり夜、あの音はちゃんと鳴ります。さすがの私もすごく気にするようになっていたので、ぱっと起きて、ベッドサイドの時計を見ました。午後11時58分でした。音はまた何度か鳴って止みました。この日は本当に気になって気になって、その後、眠れなくなりました。

 その翌朝、やっと夫に伝えることができました。たぶんあの音、携帯電話じゃないかな、と。

 で、お互いの携帯の着信履歴を見ましたが、そんな時間にどこからも電話はかかっていません。じゃあ、携帯のアラーム?と思いましたが、携帯のアラームなど設定したことがなく、というか、設定方法もわからないような私達です。念のため確かめてみましたが、やっぱり携帯のアラームでもありません。

 携帯電話の会社に電話して問い合わせてみました。不思議な音が夜中に鳴って、たぶん携帯の何かの音ではないかと思うのだけど、と。親切にいろいろ調べてくださいましたが、音の正体はわかりませんでした。

 家のなかの、思いつく音が鳴る物をあたってみることにしました。が、どれも思い当るものがありません。

 毎晩、11時58分にあの音が鳴るので、ぱっちり目が覚めるようになり、音の種類もしっかり聞き分けることができました。ピピピピッ、ピピピピッと続く音で、電話の音ではなかった。やっぱり何かのアラームのよう。夫からは、音がするのはもうわかったので、もしまた鳴ってもぜったいに起こさないでね、と言われるようになりました。張り倒してやろうかと思いました。

 その後も私の捜索の日々は続きました。ある日、リビングのステレオにアラーム機能がついていることがわかりました。このステレオ、もう古いので、説明書なんかどこかに行ってしまい、解除の仕方もわからないので、コンセントごと抜いてしまいました。音楽を聴きたいときだけ、つなげばいいのです。もうそれくらい、毎晩眠れない私は切羽詰まっていました。

 このステレオのコンセントを抜いた夜は、やっと今日から眠れる、と9割方安心して床に入りました。がっ!!!11時58分、やっぱりあの音が鳴って、そしてまたすぐに止みました。

 はあ・・・とてもショックでした。これは我が家に起こっていることではないのではないか、とも思えはじめ、静かな夜、ご近所の音が響いて聞こえているのではないか、という気もしてきて、失礼ながら、夜、アラームが鳴ってはいないか、訊いてみました。でもどなたも心当たりがありません。

 家にある、今は使ってない時計とか目覚ましを探してみることにしました。まあ、出るわ出るわ、出るわ出るわ、使っていない目覚まし時計5個。なかには私が学生時代に使っていた、懐かしい時計も出てきてうれしくなりました。

 ・・・と、うれしくなどなっている場合ではありません。出てきた目覚まし時計全部、電池が抜いてありました。もう頭がおかしくなりそうです。

 はあ〜、また眠れない、恐怖の夜がやってきた、そう思うようになっていました。

 その晩、お風呂の湯船につかりながら、もう一度、よ〜く家のなかの隅々のことを、頭に思い浮かべてみました。丹念に丹念に、丁寧に丁寧に。もうサスペンスの刑事さながらの私です。

 ああっ・・・!も、もしやっっ!!!風呂場から、夫を呼びました。
「ちょっ、ちょっとっ!!!す、す、ストップウォッチって、ストップウォッチって、ま、まさか、アラームなんてついてなかったよね??」

 ストップウォッチを、ここのところずっと出しておいたのでした。来月の発表会のタイムスケジュールを組むために、生徒さんひとりひとりの曲の時間を計るのに使っていたもの。

 ストップウォッチを手に、風呂場に戻って来た夫が言いました。「アラームが・・・なぜかセットされてる・・・12時ぴったりに。」

 ストップウォッチにアラーム機能が?その前に、ストップウォッチにも時計がついているということか?

 「その時計、私のベッドの時計と比べて、時間どれくらい違う?」と訊くと、「2分すすんどる。」とのこと。

 はは〜ん。2分違いの時計が12時にアラームをセットされていて、11時58分に鳴るわけやね。まるでサスペンスの犯人を、崖っぷちまで追い込んだ刑事の気分でした。

 何の拍子にストップウォッチのアラームをオンしてしまったのか、今となってはまったくわかりませんが、こうして一件落着となり、近所の方たちにも頭を下げ、安眠の日々が戻ってきたばかりのcucciolo家でした。