秋冬用

 今週末はお天気が良いようで。今日もぽかぽか。やっと秋冬用の花の植え替えを終えました。(秋冬用と言いながら、秋がすでに終わりかけているし・・・)

    

 普段の年は10月半ばあたりに植え替えを済ますのですが、今年は10月がまだたいへん暑かったので、店頭に並んだパンジービオラを見ても、「うへっ、まじかよ?」てな具合に素通りしてたのです。しかし一気に冬に突入してしまったので、急いで今日。

 2週間ほど前、事件と呼んでもよいくらいの出来事がありました。たしか96年あたりに、名古屋でリサイタルを聴いて、大・大・大ファンになったイタリア人テノール歌手。本当にテノールであれほどうつくしくレガートが歌える人、ちゃーんと楽譜が読めて(テノール諸君、失礼があったらごめんよ。)、とても知的で繊細な表現をするテノールって聴いたことがなかったので、もういっぺんで好きになってしまい、その後留学していた97〜99年あたりも、ミラノのスカラのプログラムはテノールと言えば彼ばかりで、私もせっせと一番安い桟敷席のチケットを買っては、何度聴きに通ったことか・・・間違いなく当時、世界一のテノールで、私の大好きな歌手の一人でありました。

 あれから時は流れ、毎日ごはんを作り続ける日々に、そんな記憶も薄れ、あんなに夢中になった彼の歌を聴くこともなくなり・・・

 突然その人が、後悔、じゃなかった、公開レッスンに来ることになったっていうやん。で、うちが通訳やら送迎を頼まれ(要するに雑用係)、ミーハーな私ももれなく付いて行きました(笑)。

 あんなデリケートな歌がうたえる人だし、見た目はいかつい風貌だし・・・めっちゃ神経質で気難しい人なのかも・・・と心配でありましたが・・・

 とても気さくで、めっちゃおバカも言ってくれる人だった(笑)こうでなくっちゃ!レッスンはもちろん素晴らしく楽しく、しかしお下品ネタも満載!放送禁止用語連発で、訳さないといけないが、しかし訳してもいけないのでステージ上で困っている夫を見るのも個人的には楽しかった。「今度ローマに来たら、ぜったい電話してくれ。」って。(彼、ロマーノです。)ありがとうっ!!(電話番号きくの忘れた。)

 とってもお天気の良かったその日、彼を送る車の中で、外を見ながら突然彼が、「あのオレンジの実がなってる木は何?」と。「あれはカーキの木。」(日本語がそのまま伝わったのか、イタリアでも柿のことをカーキという。)と答えると、「わぁお・・・」ため息のような感嘆の声をもらして、じっと窓の外を見ていた姿が忘れられません。お下品なことも言うけれど、やっぱりとてもデリケートなハートの持ち主でした。
それにしても、追っかけみたいにスカラに通った日から十数年。同じ車のなかから、一緒に柿の木をながめることになろうとは・・・

 それからね、「日本は緑はあるけど、ぜんぜん花が少ない。なんで?」という疑問も口にしてた。たしかにね、日本人、自分の家や庭に花が植わってなくても平気かもね。ああ、私も植え替えしなくちゃ、とそのときもそう思ったんだ。

 そして2時間もレッスンがつづくと、次第に夫の通訳もボロボロになり、最後の方は、2割くらいしか日本語に直せてなかったのではないか、というのが反省点。
 私 「終わりの方、ひどかったよ。」
 夫 「はあ、もう疲れちゃって、疲れちゃって・・・」