オルタ湖 1

 風邪をひき、ぐずっていたら11月も下旬だった・・・

 先月末から出かけた、秋旅日記。
 ミラノに着いて一日休んでから、旅の開始となりました。長いフライトのあと、この「一日休んでから」というのは、年をとってくるととても大事なことの様に思います。身体はもうムリが効かなくなってきています。

   
     

 旅の初め、ずーっと前から行ってみたいと思っていたオルタ湖に行った。
3、4年前、北イタリアを旅行したとき、久々に訪れたヴェネツィアで「う〜ん!やっぱりヴェネツィア最高!大好き!!」と盛り上がった後、後ろ髪引かれる想いでヴェネツィアをあとにし、次に訪れたガルダ湖で旅を締めくくったとき、完全に旅気分が盛り下がってしまったことがあった。このときの経験から、「湖は私らに合わんのやな。」ということを自分たちの発見とし、また旅の最後を締めくくる場所はとても大事、と学んだのだった。なるべく旅の最後に、気分が最高潮に達することのできるところを選択しなければ、その旅全体の印象そのものにまで大きく影響するのだ。旅のクライマックス大事。

 なのに、湖がそう好きではないのに、なぜオルタ湖に行ったのかというと、私がこれまでに目にしたガイドブックなどの写真の、オルタ湖に浮かぶサン・ジュリオ島の姿はあまりにも美しく、どうしても行ってみたかったこと、あと世界遺産になっているサクロモンテとは、果たしてどんなところや?と気になっていたことなどがあった。
 しかし夫の方は昔、オルタ湖に行ったことがあり、「小さい湖に小さい島が浮かんでるだけのところや。」とか、サクロモンテにいたっては、なぜかイタリア人ばかりのツアーに参加して行ったらしく、敬虔なカトリックの彼らに混じり完全に夫一人が浮いてしまったそうで、「あんなところに行って、一生の恥や。」とまで言う、まさにアンチ・オルタ湖な男なのであった。
 それでも私は一度、この目でオルタ湖やサン・ジュリオ島を見てみたかったし、今回の旅はトリュフがメインだけど、アルバ周辺以外にピエモンテで他に行きたいところがとくに思いつかないでいたので(もっとずっと北の方角なら行きたいところがあった。)、夫が「そんなに行きたいんだったら、オルタ湖も一回行ってみてもいいかも。」と言ってくれた。また、湖に行くと私たち夫婦が気分的に盛り下がってしまう点に関しては、いくら湖でも、私たちの家がある今住んでいる町の日常風景を考えれば、旅の最初ならオルタ湖も感動するで、という話し合いからだった。そして肝心の旅の最後は、ノリノリになれるように、大好きな海に行こう!ということで旅のだいたいのプランがまとまり、オルタ湖も行程に組まれた。

 しかし地球の歩き方にもあったように、オルタ湖に行くのは結構不便で、ミラノから電車でノヴァーラまで行き、そこから乗り継ぐオルタ・ミアジーノ駅に行く電車の本数がとても少ないのだった。めちゃめちゃ早朝か、そのあとはお昼過ぎに一本、その次だとオルタ湖に着くのは夕方、という感じだった。で選択肢もないので、ノヴァーラから午後の早めの便に乗れるようにミラノを出発した。
 さらに最寄りのオルタ・ミアジーノ駅から、オルタ湖まではかなり距離があり、荷物がある場合はホテルにタクシーを頼むと良い、と地球の歩き方にあったので、ホテル予約の際にその旨のメッセージを入れた。すると後日ホテルからメールが届き、「そんなサービスはやってないので、タクシーは自分で呼べ。」という返事といっしょに、タクシー運転手の電話番号やらメールアドレスが送られてきたので、これは親切で教えてくれた、と前向きにとることにした。で、教えてもらったタクシー運転手にメールでオルタ駅到着時間を伝え、予約をしてから日本を出発、ミラノに着いてから確認の電話を入れた。ちなみにこれも地球の歩き方に書いてあった、駅から歩いて5分ほどのとってもゴージャスな、ホテル・クレスピの前から有料の小さな観光列車が街の中心まで走っているとあったが、私の行った10月末には見当たらなかった。シーズンのみの運行かも?と思う。またオルタ・ミアジーノ駅は切符すら買えないような無人駅のため、往復を買っておくか、オルタから先の次の行先の切符まで買ってから行った方が無難ではないかと思う。私もミラノで翌日のオルタ発の切符を買ってから出かけた。ちなみにタクシーの運転手さんはとてもいい人だったので、駅からホテルまで送ってもらっている車内で、翌朝のホテルから駅までの移動もこのときお願いした。

 かくしてやっと到着した、オルタ・サン・ジュリオの中心の広場。↓
    
   

 夏はもっとにぎわうのだろうけれど、訪れた10月末は人も少なく、静かで落ち着いてとても良かった。コモ湖マッジョーレ湖のような華やかさはないけれど、私はオルタ湖のほうがのんびりできて好きだった。湖の色や、サン・ジュリオ島の景色も少し靄がかかったようではあったのだけれど、かえってその方がこの季節の晩秋の雰囲気にぴったりで、良いように思われた。

 しかし湖は冷える。これはガルダ湖に行ったときにも思ったことだが、めちゃめちゃ底冷えがする。万が一、寒い時のためにと、おっさんの下着で言ったら「パッチ」と呼ばれるおよそ色気のないものを一枚、荷物にしのばせておいたが、これがさっそくに役に立つ。湖にパッチは必須。そして私がイタリアの旅ができる季節としては、この10月末から11月初めが限界、ということを知る。

 泊まったホテルは、Hotel Leon d'oro ホテル レオン・ドーロ。湖畔にあるホテルでロケーションはとても良かった。タクシーの運転手さんの話では、ここのホテルのレストランがとても美味しいということうことだったので、この夜はここのレストランで食事しよう、と一旦は意見がまとまったが、貼ってあったメニューの値段を見てここは却下となった。(結局この日の夕食は、近くの小さなトラットリアで、ゴルゴンゾーラのニョッキを食べた。ゴルゴンゾーラはこの辺が本場だったと思ったし。美味しかったし、何より身体が温まった。淡水魚が食べられないこと、これも私たちが湖がいまいちな理由のひとつであると思う。)

 ホテルの部屋は、インテリアや清潔さ、ベッドマットの硬さなどは申し分なかった。私たちは値段の安い部屋を予約したため湖の見えない部屋であった。が、それはまあいいとして、ともかくそこは我が家の旅史上、最狭の部屋だった。びっくりした。荷物は広げられないし、部屋の中を歩くときは、カニ歩きをしなければいけなかった。安い部屋と言っても110ユーロだったので、「なんでこんなに狭くなっちゃうのか?」という気がしなくもなかったが、この旅の目標に「怒らない」と「節約」を掲げていた私は、あまり気にしないことにした。私の泊まった部屋はあんまりだったけれど、ホテルとしては悪くはないところだと思うので、値段をケチらなければ快適な滞在になると思う。しかしあまりに狭くて身動きがとれないので、たまたま私たちの部屋の入り口のすぐ前に、おそらく飾りを兼ねているであろう豪華なソファーが置かれていたので、宿泊客が少ないことをいいことに、私はこのソファーも自分の部屋の一部であるとみなし、ここでお茶を飲んだりくつろいだり、ベッドに寝転がりたいときは部屋に入ったり、という勝手な使い方を思いつき実践した。

 だけど翌朝、朝食まえにホテルのバルコニーに出てみると、素晴らしい眺め!
    
    

 湖が見える部屋なら、きっとこの景色が拝めたのだろう。
 
 このあとものすごい勢いで朝食を食べ(というのは、朝食が8時からで、8時半にはタクシーの迎えが来て駅に行かなければならなかったので)、あっという間にオルタ湖をあとにしたが、前の日のサクロ・モンテとサン・ジュリオ島に行ったときのお話はまた次回。(遅々としながら執筆予定。)