それぞれのミラノ

cucciolo-mayu2009-03-23

    
 昨日は一日中、暴風雨の日曜日。
お昼にPasta alla milaneseを作る。これは我が家では、ただ単に「ミラノ」と呼ばれることもあるパスタ。ミラノ名物に、Risotto alla milanese ミラノ風リゾットという、サフランを使った黄金色にかがやく料理があるが、あれとは全く関係がない。またミラノに行ったところで、パスタのミラノ風などという料理は存在しない。あくまでうちだけで通用する名称だ。
 どんなパスタかというと、缶詰のTonno(ツナ)が入った、トマトソースのパスタ。それだけ。このソースにはスパゲッティもよくあうが、昨日はなんとなく気分で、マッケローニのようなショートパスタにしてみた。
 イタリア人はわりと肉食で、日本のようにしょっちゅう魚を食べないし、ミラノは海から遠く離れていて、おいしい魚に出会うのは難しい。(ミラノやローマのスーパーの魚売り場の、なんと臭いこと。)たとえ出会えたとしても、たいがい高級品なので、当時留学生だったわたしには手が出るものではなかった。自分の懐具合にあって、なおかつ唯一安心して食べられる鮮度の魚(?)が、ツナ缶だった。だから、ミラノにいたころは、このメニューをくり返し作っては食べていた。
 偶然にも、違う年代に、ミラノに長く暮らした夫も、まったく同じ理由からこのツナのパスタはよく食べていたのだという。
「これってミラノの味だよねー。」「安全な魚ってこれしかなかったよねー。」と話すうちに、いつしかうちではミラノ風、となってしまった。ツナをトマトで煮ているときの独特の香りは、私にとっては強烈にミラノのにおいだ。
           
 とくにどこがどうとか、すごく美味しい料理だとか、そういうことではない。ただ黙々と口へはこび、それぞれの記憶のなかの懐かしいミラノを想い味わう、精神的な料理なのだ。
 今日のお昼もまたパスタ。定番、あさりのスパゲッティ。あさりの身がプリプリではなく、もうブリブリ。貝のきわきわまで身がはいっていて、ジュワーっと潮の味が口中にひろがり、まさに今が旬!こちらは五感全部で味わう、文句なしに旨いパスタ。