サボ

    

 最近、イタリアに関する記事を書いてないなあと思って。理由は寒いからだろうか?春や夏の暖かい時期に旅行することが多いから、私の見るイタリアの景色と冬の寒さが結びつかないためだろうか?どうしても自分は、夏の太陽の輝くイタリアが、大好きだからだろうか。
 でも、寒い地域のことなら書けるかな?というわけでアオスタでのお話。(と言っても旅行した時期はやっぱり夏だったのだが。)

    

 BS日テレの「小さな村の物語」という、イタリアの名もない小さな村の人の暮らしを採り上げた番組は、ほとんど欠かすことなく観ているわが家。いつだったかその番組で、ヴァッレ・ダオスタ州のアンタニョーという村の巻を観たときのこと。サボと呼ばれる、木彫りのぽっくり靴がこの地方に伝わることを知った。オランダの有名な木靴はカラフルに色づけがされるようだけれど、木をくりぬいて作られたこのサボは白木のまま。とっても素朴な感じがこの地域の風土とぴったりだなあ、と思った。まさかこの村に行くことはないだろうけど、でもあのサボはすごーく気になる・・・と思っていたら、アオスタに行くことになった。
 ひそかに胸にとめていた私の気持ちに、テレビを観ていたときから夫は気づいていたのだろう。「あそこから近いんだもの、アオスタにだってきっとサボはあるよ。」というその言葉どおり、サボはアオスタの街の、何てことないお土産やさんで呆気なく見つかった。

 夢にまで見たサボが目の前に。気分はルンルンで、さっそく履いてみる・・・が、履き心地はお世辞にも良いとは言えなかった。たしかアンタニョーの村の人は、今でも日常生活のなかでこれを使っていて、雪の日だってこれで歩いていたと思うのだが。とてもじゃないが、私にはサボで歩くなんてムリだった。それに当たり前だけれどすごく大きくて、おいそれと持ち帰れそうなものでもなさそうだ。仕方なくミニチュアの、お土産用のサボを買った。どこかに置いてもかわいいし、壁にかけて飾っても良いと思って。(イタリア中のお土産物が、わが家にはこうしてどんどん増えていく。私が死んだあと、これらの博物館ができるのではないか?)

   


 街を歩いていると、お店のショーウインドーの中にも、サボを飾ってあるところがあった。売り物ではなさそうだし、見た目もお土産ものとは違って、もっと作りが細やかで繊細そう。このサボ作り専門の職人もいるそうだから、これなんかはマエストロ作のものかもしれない。

   
 サボだけではなく、この地方は木工製品が名産だった。険しい山がすぐそこまで迫ったこの辺りの気候は、それは厳しいものだろうに、木で作られたモノたちはどれもあたたかで穏やかで、やさしかった。