フィレンツェのお気に入りのお店

       

♪ Firenze stanotte sei bella in un manto di stelle,
che in cielo risplendono tremule come fiammelle 〜♪
 フィレンツェよ、今宵、お前はうつくい。炎のようにまたたきながら空にかがやく、星のマントにおおわれて・・・

 夜、夕食を終えて、ふらふらいい気分で歩いていたときのこと。突如、目の前にあらわれた花の大聖堂にうっとり。星空ではなかったのかもしれないけれど、思わずこの曲のフレーズが、口をついて出たのでした。壮麗なこの大聖堂を見るだけで、フィレンツェが「花の都」とよばれる理由、わかるような気がします。

 美術や歴史にうとい私。フィレンツェについては、何度も訪れていながら、一般常識レヴェルの事柄すらあやしく、お恥ずかしいかぎり・・・そのくせ、少しは勉強してみようか、という気すら起こらないのですから・・・申し訳ありません。

 そんな私がとくにご紹介できることってないんですけど、それでも、「ここには必ず足を運ぶ!」というお店を。(って、ここ、以前にもブログでご紹介したことあるのですが。)

 おばあさんの紙の店。今回も行きました。いやあ、じつは店の名前を・・・知らないんです。今回も舞い上がっていたせいか、確認ならず・・・(かさねて申し訳ありません。)

 お店の名前は不明ですが(!)、場所はご説明できます!(やれやれ。)
有名なポンテ・ヴェッキオ(ヴェッキオ橋)を、街の中心シニョリーア広場から、川の向こう側に渡ってください。
 渡ったらすぐの道を左に折れます。通りの名前は、Borgo San Jacopo サン・ヤコポ通り、を少し歩くと、右手方向に入る、道とも呼べないような小さな通りがあります。ここを入ってすぐ右手にある建物の半地下みたいな場所が、おばあさんのお店。いつも半開きになっているドアを、ギーっと押しながらあけてください。(ちなみにこのドア、ずっと前から壊れています。)トントンと階段を数段降りたら、そこには小さなおばあさんがたった一人でやっている、小さいけれど素敵な空間。(この通りをもう少し入った左手奥に、高級ホテル、ホテル・ルンガルノがあります。目指すお店はホテル・ルンガルノまで行かずに、もっと手前にあります。目印として、ホテル・ルンガルノを目指していけばスムーズだと思います。ここまで書いて、あはは、私、住所も把握してないんだなあ、と・・・)

     

 おばあさんがいるカウンターのような台は、お買い物のときだけお会計の場所になるんだけど、あとの時間はずーっと、おばあさんの作業場、アトリエであるらしい。お店に入ったときだけ、ちらっと視線をよこして、一応、挨拶はしてくれるけれど、すぐに自分の世界にもどり、うつむいて紙とだけ戯れつづけるおばあさん。

「相変わらず、愛想悪いばあさんだよな。ドアもまだ直ってねえし。」「買ってくれなくてもぜんぜんいい、って感じだよね。」「ばあさん、ドア、直す気なんかないんだよ。」「っていうか、ここはこれでいいんじゃない?」というのが私たちの会話。でもぜーんぜん腹なんか立ちません。おばあさんの世界を邪魔しに入った、私たちのほうがずっと悪者だという気すらしてくる、というもの。

     

 お店で売られているのは、すべておばあさん手作りの、とてもきれいな模様の紙を使った小物。小箱だったり、鉛筆立てやフォトスタンド、壁の飾りなど。写真の三角形のは、少し変わったしおり。日本の折り紙のかぶとのように、三角形の一番下の辺のところが開いて袋状になっていて、そこに読みかけのページの角を入れて、しおりの三角の角と、本のページの角がぴったり合うようになっています。生徒さんのお土産にしたら、楽譜の宿題のページに挟んで使ってくれている子も。
 フィレンツェといえば、マーブル模様の紙の小物が有名ですが、ここのお店のものは他にはなくて、しかもフィレンツェらしい上品さがあって、お土産にもおすすめです。どの商品も、どこかに小さく、「Firenze」というロゴ(?)が入っているところも、きっとおばあさんのこだわり。