グレーヴェ・イン・キアンティ 3

     
 夜のマッテオッティ広場。イタリアの広場に立ったり、街を眺めたりするとき、例えば教会はここにあって、家と家はこんな風にならんで・・・と、街づくりに何の迷いもなく、頭のなかにある街の図面みたいなのに従って、どんどんあるべき場所にいろんな建物が建てられていって、街が形作られたような気がしてならない。太古の昔から、あの国の人たちのDNAのなかには、そういうセンスが秘められていたのだと。

     
このマッテオッティ広場の一角に位置する、Albergo del Chianti アルベルゴ・デル・キアンティが今回泊まったホテルです。ネオンが灯ってるところね。(しかし何故、夜の写真なのか?)
       
家族経営らしく、スタッフの方たちもアットホームな雰囲気であたたかく、トスカーナらしいカントリーっぽさ漂うホテルでした。
部屋は少々狭かったけれど、清潔で、私は充分快適に過ごせました。ベッドはお姫様みたいに素敵!と思ったけれど、これはひょっとして蚊帳かや?(←ここで笑っといてくれるとうれしいです。)夏は蚊が多い、ということなのかしら?私たちは、インテリアなのか蚊帳なのかわからない、このオーガンジーちっくな布、触らぬままで過ごしました。

     
 プールのあるお庭も素敵でした。しかし使う人もない時期でさえ、この手入れの素晴らしさ!これもこの国の人たちのDNAゆえなのでしょう。日本ならこの時期のプール、外なら緑色の藻が生えるか、室内ならカビだらけだわ・・・夏の滞在は、プールに入ったり、蚊帳をつるしてお昼寝をしたり(?)、さらにのんびりできそうですね。朝食も、夏ならこのプールの近くに作られたスペースでいただけそうでした。

 フロントのお兄さん(このホテルのオーナーの息子さんだと思います。)に、シエナまで行きたいのだけど、と、このホテルを出る日の移動について、訊いてみる。グレーヴェからまたフィレンツェまで戻って、そこからバスか電車でシエナへ、という方法は、出来れば避けたかった。私たちの目的地はシエナではなくて、さらにそこからモンタルチーノまで一気に移動しなければならなかったので、出来る事なら移動距離も時間も少なく済む方が、若くはない身体にはありがたかったのだ。お兄さんによれば、以前はグレーヴェからシエナまで行くバスがあったのだけれど、利用者が少なく、廃止されてしまったとのこと。ダメ元で、「タクシーは?」と訊くと、「たぶん80ユーロはかかると思う。」と言うので、私たちの予算ではちとムリ。「じゃあ、何か別の方法がないか、探してみるよ。」とお兄さんは親切に言ってくれる。そして、早朝、グレーヴェからラッダ・イン・キアンティに行くバスが1本あることがわかり、ラッダまで移動したところでバスを乗り換え、シエナへという、どちらもめちゃめちゃ本数が少ないバスを乗り継ぐ移動方法を調べだしてくれた。「これだったらシエナまで、一人5ユーロくらいで行けると思うよ。」って。実際、ホントに5ユーロちょっとでした。調べたり、説明してくれたりしているお兄さんの様子を見ながら、夫がしみじみと、「なんでこの国の若い子は、家の仕事をこうやってちゃんと継ぐんだろうね。」と言う。「親の背中を見て、子は育つ」って、こういうことかなのかな、と、そのときふっと思った。