忘れない言葉

 私が知っていたのは、詩人のウンベルト・サーバだけだったのだけれど、トリエステは、そのほかにも文学者を多く輩出した土地であったよう。

 で、街のなかを歩いていたら、こんな像がおもむろに立っていたんですね。

    

 ひとりでぼんやりと歩いていたとき、突然目の前に現れたこの人は、そのうえあまりにも何気ない様子で立っていらっしゃるので、ほんとにびっくりしたんです。それからやっと、「ところで誰、この人?」って。

 足元にプレートが埋め込まれていました。イタロ・ズヴェーヴォと、名前は聞いたことがありましたが、作家で、やはりこのトリエステ出身の人物であったらしいのですが。

 そこに刻まれていたこの作家の言葉が、とても心に響きました。

     

 人生に、醜いもうつくしいもない、あるのはオリジナルな人生だけさ!

 それぞれの人生は、その人にしか歩むことができない、独創的でかけがえのないものである、と。

 あまりにも唐突に謳われた言葉が、なんだかかけがえのないものに思われて、道の真ん中で、ものすごく勇気づけられて、ふっと心が軽くなったのでした。