マントヴァ 独断と偏見で

 出発が来週になりまして、いつものごとくまだ何も準備はできていませんが。予定が変更のうえに変更になり、やっともうこれからは変わることがないのか?あるのか?

 いつものように、出発間際になって前回の旅行の写真の整理がついていないことが、なぜか気になり始めるわたくしです。今まで放っておいても平気だったのだから、そのままでいいような気もするのに、なぜか出発前にはきちんと整理した状態で出かけたい。はは、メモリーカードに入ったままで、パソコンに取り込んでもいなけりゃ、何の写真を撮ったのか、さっき初めて確認した始末です。

 というわけで今日は、たった今パソコンに取り込んでホヤホヤの、昨年の写真を。

 マントヴァです。滞在したヴェローナが、あまりにも観光地化されすぎていて辟易し、気分転換に半日ほど出かけたマントヴァ。電車でほんの4、50分、とタカをくくったのが間違い。こういう枝葉のようなローカルな路線は、ぜんぜん時間通りに走ってはくれません。覚悟してお行き。

 マントヴァといえば、やっぱりイザベッラ・デステでしょうか。ゴンザーガ家の豪奢なお城、ドゥカーレ宮でしょうか。

 一般的にはそうなのでしょうが、そしてそういった場所や事柄こそが、この街の大切な歴史、文化なのでしょうが、十数年前、初めてのマントヴァでこれらの、つきなみ、と思えるマントヴァを観てまわって、個人的には何だかどうもしっくり来なかった・・・私の思い描いていたマントヴァを、まだ全然観ていない、という気がして。

 そう、マントヴァは、音楽をやる人にとっては何よりも、リゴレットの舞台ではありませんか!(まあ、ドゥカーレ宮もリゴレットの舞台として登場はするがの。)

 だからと言って、子供騙しみたいな「リゴレットの家」なんかには行ったりしませんが。(ちなみにヴェローナでも、ジュリエッタの家やロメオの家などは、大人のわたくし、もう行ったりしません。)ヴェルディの、歯切れの良い軽快な音楽に乗っかったわりには、内容は何だかドロドロした、後味の悪いオペラ。あの雰囲気のある場所を探し当てたく、二度目のマントヴァへほとんど思いつきで出かけました。

 でもせっかくなので、マントヴァの街も少しは写真におさめましたよ。

     

 街の中心、エルベ広場。中世の建物が立ち並び、初めて来たときはなんてうつくしい広場だろう、とうっとりした記憶が。あの日はお天気も素晴らしく良かった。


     

 少し歩けば、ドゥカーレ宮殿のあるソルデッロ広場。今回は入りませんでしたが、右側の建物がドゥカーレ宮殿。前回の訪問のときも、「とても全部は見きれません。」というへとへと状態になったような・・・

 写真の正面奥に見えるのが、ドゥオーモ。ここの内部はこんな感じ。

     

 重苦しい空気が漂っていない祈りの場所は、しんどくなくて私は好きです。

 このソルデッロ広場の脇を抜けて、湖に出ることにします。私のオペラリゴレットのイメージは、不気味なほどに静まり返った、暗い湖の景色に支配されています。

 大きな通りに出ました。左右を確認して渡ります。日本では、右見て左見て右、ですが、イタリアでうっかりこれをやると車にひかれそうになることがあります。左見て右見て左、です。

 後を振り返って見えたのは、サン・ジョルジョ城。(たぶん。)

     


     

 どの建物も、頑丈に作られてますね。(とても薄っぺらい感想。)

 道を渡って、道路から低くなったところが、もうずーっと湖でした。

     

 湖に沿って、遊歩道が設けられており、ワンちゃんを連れたお散歩の人や、ベンチに腰かけてぼーっとしたりしている人たちが。とーってものんびりした生活ですね。ヴェローナの人ごみに疲れてしまっていたので、この静けさに心からほっとしました。やっぱり私は、街は苦手・・・

 マントヴァは3つの湖に囲まれた街で、地図で確認すれば、この目の前の湖はメッゾ湖ということになりますか。

 船着き場もあり、というか、ここから遊覧船が出ている模様。(この日は出ていないようだったし、気まぐれな運行かもしれません。)

      

 ね、なんかどろんとした湖で、ええ感じやね。(←リゴレットの舞台としては。)

      

 この日の空の色も靄がかかったような薄いグレーで、水面の色とほとんど区別がつかない、この感じもどろろんとして良いです。(個人的には。)

      

 第3幕。リゴレットの娘ジルダが、愛するマントヴァ侯爵の身代わりとなって、父の雇った殺し屋に自ら刺されてしまうのでした。自分の娘が犠牲になったとは知らないリゴレットは、死体の入った袋を受け取るのですが、中に入っていたのはもはや虫の息となった愛娘。悔いるリゴレットに不幸を詫びながら、ジルダは死んでいきます。maledizione 「呪い」という不吉な言葉を覚えたのも、このオペラでした。

 何ともいや〜な気分になるストーリーですが、繰り返すけれども、ヴェルディの音楽はやはり素晴らしいです。人間の魂とか心を揺さぶる、本質的な音楽だと思う。

 このあと簡単にピッツァの昼食をとって、そそくさとヴェローナへ帰ったのでした。(と書いてしまえばあっさり帰れたみたいだけれど、帰りの電車もひどかったよ。マントヴァ始発だったけれど、出発が30分以上遅れてね。途中も駅でも何でもない、畑の真ん中みたいなところで立ち往生したりしてね。予定より1時間くらい遅れての到着だったと思います。はあ。)

 湖しか見なかったけれど、もうそれで大満足。長年の不完全燃焼が解消された一日でありました。