トスカのローマ

 10月に入りました。毎度のことで、旅から帰ってきた月は、なんとなく夢うつつ、いや、旅うつつなままに時が過ぎてしまい、よって今年も9月はほとんど心ここにあらずのまま過ぎてしまったのですけれど、月もあらたまったことですし、ちゃんと腰を落ち着けて。腰といえば、腰痛はイタリアでしっかり泳いだのが良かったのか、他人の身体のように良くなり、最近はときどきプールにも通ったりなどしていて、これも思わぬイタリア効果なのではないかと。

 このあいだの記事のついでに、と言ってはなんですが、先日(って言ってもずいぶん前)、トスカ第二幕の舞台に採りあげられたファルネーゼ宮を載せましたので、今日は第一幕と第三幕の場所も。あくまで「ついでに」ですから、簡単に。

 トスカの舞台、全幕を通して、テルミニ駅から64番、あるいは40番のバスで周れますので、オペラファンの方は気が向いたらぜひ。64番は鈍行ですごく混み合いますので(スリも多いらしい。)、私は40番の急行に乗りました。(これだって混むけど。)

 タイプライターだとか、ウェディングケーキ?(あれ?バースデイケーキだった?)とか、散々な形容をされているようですが、私は見るたびに立派に威容を誇る姿だと思ってしまう、真っ白なヴィットリオ・エマヌーレ2世記念堂、ここも途中に拝めます。いやあ、こうして写真で見ても、やっぱりきれいよお。

     

 それを過ぎて間もなく。第一幕のサンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会へは、40番のバスならトッレ・アルジェンティーナ下車、64番ならトッレ・アルジェンティーナの次のバス停で降りれば目の前です。ちなみに私のように腰痛のひどい方は、40番でトッレ・アルジェンティーナまでぶっ飛ばし、そこからたったバス停ひとつですがご丁寧に64番に乗り換えると全然歩かずに到着します。(←実体験済。)

 サンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会、何てことない外観ですが・・・

     

 写真にはうつっていませんが、この教会のドームはサン・ピエトロ大聖堂に次ぐ高さだそうです。

 教会内部の様子を・・・

     

 とても華麗なバロックの教会で、私、ここ素晴らしいと思いました。ローマの長い歴史からすれば、比較的新しい時代のものだからでしょうか、ガイドブックにもこの教会のことはさらっとしか書かれていなくて、ローマほどの街ともなれば、こんなに絢爛豪華な教会も、取るに足らないものになってしまうのか、と。それにしてもここをオペラの舞台として採りあげるとは、たしかにそれにふさわしい華やかさがある場所だと思いました。

     

 天井画が素晴らしく、ずーっと上を見上げるのが苦しくて、教会の椅子の上に、お行儀悪くこっそりひっくり返って見上げてみたり、腰痛の大患者は大変な思いをしながら堪能しました。天井が高くて天井画がはっきり見えなかったのだけれど、これを克服するにはカメラのズームを使ってみればいいのだ!ということを発見しましたよ。(ってみんなやってることかな?)オペラでは、この教会でカヴァラドッシがアリア「たえなる調和」を歌いあげます。

 このあいだ載せた、ファルネーゼ宮。↓

     
 先ほどのサンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会からも歩いてすぐで、ファルネーゼ宮へはカンポ・デイ・フィオーリの市場を突っ切って行くのが一番簡単だと思いました。私は夫のナビに従い、くねくねと曲がった中世の時代に造られたのであろう路地に入ってしまったがために、なかなか目指す第二幕の場所は見つからず、通りがかりの人に道を訊ねたり、お店に入って場所を訊いたり、腰は痛いしでもう散々。んでファルネーゼ宮で寝るの図、となったわけ。↓

     

 はい、第三幕も64か40番のバスで。バスがテーヴェレ川を渡れば見えてきます。

     

 とっても青い空をバックに、くっきりとうつくしい聖天使城、サンタンジェロです。

 オペラの舞台は屋上になります。有名な「星は光りぬ」はここね。あと最後の場面、オペラではトスカがテーヴェレ川に身を投げて死ぬことになってますが、あの屋上から飛び降りても、テーヴェレ川はおろか、川より手前の道路にも届かないと思う。せいぜい城の敷地内に落下するのがオチかな、と・・・って、こんなふうに史実や現実と照らし合わせると、オペラなんてアホくさくてやってられないとつくづく私は思ってしまうタイプで、どうにも自分が身が入らなかったのもそこなんじゃないか、という気がして。

 お城の前のテーヴェレ川にかかる橋、サンタンジェロ橋。

      

 橋の欄干には、バロックの彫刻家ベルニーニの天使の像が配されています。(コピーだったかも?)

 そしておまけは、バス停への帰り道、正面に見えるのはヴァチカンのサン・ピエトロ寺院

      

 太陽が傾きかける前の時間、逆光のなかのうつくしい大聖堂でした。こんなに目の前まで来ても、ぜったいに立ち寄ることはしない夫。私も腰が痛いし、この日はこれだけで帰りました。

 今回のローマでは、別の日にも40番を利用して出かけることが多く、やっぱり観光客には結構使える路線だなあと実感しました。